縦：約50mm
横：約40mm
作者：カルロ・パルラーティ
QR：カタログクオリティ

日本で高い人気を誇る彫刻家カルロ・パルラーティ作の入荷です。

20世紀の彫刻の鬼才カルロ・パルラーティ。
カメオについて調べる人が真っ先に覚える作者のひとりであり、その特徴的なデザインは一度見れば忘れることはありません。
カルロ氏が活動し始めた当時、すでにジョヴァンニ・ノト氏の活躍によってモダンカメオの時代が到来しており、華やかなプロフィールや絵画のカメオ化などが一般的になりつつありましたが、カルロ氏はその流れに身を任せることなく一度古典的な構図へと立ち返り、そこから独自に再スタートする形で独特の生命観や宗教観などを描いてゆきました。
比較的単純なプロフィールのカメオにおいても、構図は19世紀のアンティークカメオに通じるものがほとんどを占めており、カルロ氏の解説においても古典的なようでいて現代的でもある革新性、市場からの需要を無視し自身の芸術性を追求する反抗性についての記述がみられることがありますが、その構図に表れている傾向はまさに、カルロ氏のそうした取り組みが形になったものと言えましょう。
また、その構図があまりにも印象的で技術的な面について触れられることがほぼ皆無ですが、まったくブレのない線で彫られた作品たちからして、仮に普通のカメオを彫ったとしても極めてレベルの高い作品を作り得る高い技術を持っていることも忘れてはならないところです。
実際にパトリツィア・パルラーティ氏よりカルロ氏の初期の習作として提供された写真には、まさに古典彫刻のミニチュアといった精緻な素晴らしい作品が写っており、またそれらの作品は全て厚みのあるコンクシェルに彫られていましたが、カルロ氏が”若手のカメオ彫刻家はコンクシェルで修業を積むべきだ”という彫刻の基礎の修練の重要さを説く言葉を残したことも伝えられており、決して奇抜な作風のみでその名を挙げたわけではないことが伺えます。

今回はカルロ氏による90年代の作品。
諸般の事情で当ギャラリーではあまり取り扱いがないものの、日本市場では3年ほど前まで大変高値で取引された大人気のタイプです。
ここ2年ほどの間にずいぶん時価が落ち着いてきましたが、まだまだモダンカメオの世界においては高く評価されております。
本作はカルロ氏独特のデフォルメで描かれた毛皮のマントを羽織った女性像のカメオ。
白地に黒い点が散らばる毛皮はアーミンといい、オコジョの冬毛皮のみを素材とした特別なもので王族の象徴とされた衣装です。
また、オコジョは毛皮を汚されるより死を選ぶという伝承があったことから、かつてヨーロッパでは純潔の象徴でもありました。
彫りはさすがにシャープでメリハリがはっきりしており、この年代のカルロ作としてはコントラストもしっかりついておりなかなか上質です。
また、カルロ作はあまりモチーフに特色がない作品が多いところ、本作はモチーフを示すシンボルが入った珍しい作品ですので、カルロ・パルラーティ作がお好きな方にお勧めしたい作品となっております。

貝は非常に濃いコーヒー色にくっきりとした白色の乗ったサルドニクス。
晩年のカルロ作は貝の質が良いものはめったになく、コントラストも今一つなものが多くなるところ、本作は白色が濃くバリっと色が別れております。
特に本作はこぶの部分を使っているわりに色にじみがなく良質です。
褐色層もかなり厚く、きついヒビが入っていたり割れていたりするものが多い中で珍しい無傷。
ただしやはり完璧ではなく、白色層に薄いヘアラインが散見されます。
とはいえ強度等に問題があるものではなく、この年代のものとしては健全な方と言って差し支えない良い状態です。