縦：約54mm
横：約40mm
作者：カルロ・パルラーティ
QR：アーティスティッククオリティ

日本で高い人気を誇る彫刻家カルロ・パルラーティ作とみられる超希少作の入荷です。

20世紀の彫刻の鬼才カルロ・パルラーティ。
カメオについて調べる人が真っ先に覚える作者のひとりであり、その特徴的なデザインは一度見れば忘れることはありません。
カルロ氏が活動し始めた当時、すでにジョヴァンニ・ノト氏の活躍によってモダンカメオの時代が到来しており、華やかなプロフィールや絵画のカメオ化などが一般的になりつつありましたが、カルロ氏はその流れに身を任せることなく一度古典的な構図へと立ち返り、そこから独自に再スタートする形で独特の生命観や宗教観などを描いてゆきました。
比較的単純なプロフィールのカメオにおいても、構図は19世紀のアンティークカメオに通じるものがほとんどを占めており、カルロ氏の解説においても古典的なようでいて現代的でもある革新性、市場からの需要を無視し自身の芸術性を追求する反抗性についての記述がみられることがありますが、その構図に表れている傾向はまさに、カルロ氏のそうした取り組みが形になったものと言えましょう。
また、その構図があまりにも印象的で技術的な面について触れられることがほぼ皆無ですが、まったくブレのない線で彫られた作品たちからして、仮に普通のカメオを彫ったとしても極めてレベルの高い作品を作り得る高い技術を持っていることも忘れてはならないところです。
実際にパトリツィア・パルラーティ氏よりカルロ氏の初期の習作として提供された写真には、まさに古典彫刻のミニチュアといった精緻な素晴らしい作品が写っており、またそれらの作品は全て厚みのあるコンクシェルに彫られていましたが、カルロ氏が”若手のカメオ彫刻家はコンクシェルで修業を積むべきだ”という彫刻の基礎の修練の重要さを説く言葉を残したことも伝えられており、決して奇抜な作風のみでその名を挙げたわけではないことが伺えます。

今回は当ギャラリーでは取り扱いが珍しい90年代の作品。
モチーフは中近世イギリスの女王とみられ、ほかにもいくつか同様の作例が知られます。
イギリスが需要のほとんどを占めていた19世紀では、当時即位していたヴィクトリア女王はもちろん、現代のエリザベス2世をはじめとするイギリス王室の直系の先祖であるメアリー・オブ・スコッツことメアリー・スチュアートなどのカメオが人気を博しておりましたものの、市場の中心がアメリカ、オーストラリア、そして日本に移った現代では、基本的にはほかの作者がモチーフにすることは無い系統です。
カルロ氏が例外的にこうしたものをモチーフとするのは、やはり先述の通りカメオを作る際には古典を下地としていたからでしょう。
カルロ氏の作品で特定の人物をモチーフとすることは神話を除けばあまりなく、また彫刻作品や80年代のカメオまで多く見られた本来のカルロ氏の作風である生命そのものをメインとしたものではなおのこと一個人をモチーフとして取り込むことがなかったため、こういったデザインはカルロ氏の作品の中でも90年代の作品の特色といえそうです。
ちなみに慣例的には先述のメアリー・オブ・スコッツか、イングランドの黄金期を築いたといわれるエリザベス1世がカメオのモチーフに選ばれた傾向にあり、本作はどちらかといえばメアリーの方がモチーフになっているように思います。
彫りの方は現代作家の中でも特に彫刻技術に秀でていたカルロ氏らしく非常に鮮明な陰影が特徴的。
とくに顔のシャープさはほかに類を見ないもので、カルロ作の良さの主たる要因の一つとなっております。
さらに黒目が入った目は見る者の視線を顔に集中させ、不定形の生命をテーマとした80年代の流動的な雰囲気とはまた違う、確固とした存在感を感じさせます。
特に今回のような特定のモチーフがある場合はなおさらで、90年代のカルロ氏の表現によく合ったカチっとまとまっている作品といえましょう。

貝は濃いコーヒー色と透明感のある白色のサルドニクス。
こぶのある部位を使っており、こぶ付近は淡い黄色が乗っています。
ヘアラインは裏から見て8時位置に数筋、それから2時位置から3時位置にも数筋ある中で1筋は薄ヒビに発展してしまっていますが、現状で直ちにここから割れるといった感じではなく、ひとまず安定しております。
それから白色層にも、こぶから右上にかけてヘアラインが確認できまして、この薄ヒビと白色層のヘアラインに関しては時価に考慮しております。