縦：約47mm（カメオ42mm）
横：約38mm（カメオ33mm）
作者：－（アンティーク）
QR：ミュージアムクオリティ

世界的に見ても非常に稀な大型のサードニクス・ストーンカメオの入荷です。

現在でこそ機械生産がおこなわれ大量生産されているメノウを素材としたハードストーンカメオ。
カメオの歴史においては1970年代より作られ始めたもので、それより前は人が手作業で鋼より硬いメノウを彫って作っていたため、希少性も価格も現在の比ではありませんでした。
一般に、カメオはストーンカメオが本式であり高級品であると言われるのはこの時代のもののことで、現在のストーンカメオは高級品どころかそもそもカメオの定義に沿っているかどうかすら怪しい工業品であり、本式とうたわれる確かなストーンカメオは時を経るごとに貴重になってきております。
今回のお品物はその貴重なストーンカメオの中でも特に評価の高いサードニクス系のメノウを使用したもので、その中でも大きく像に厚みがある逸品中の逸品です。
ストーンカメオで像に厚みがあるものは原則的には色付きメノウでないものが多く、今回のような作例はストーンカメオの中でも稀。
色付きメノウはおそらく素材の条件的に恵まれたものが少なく像に厚みを取ることができないのだと思いますが、今回の作品はそれを裏付けるようにかなり扱いづらそうな素材を非常に巧みに彫刻して作られたもので、サードニクスで像の特に良いカメオというものは、このような技量があってようやく世に出るのだということを知らしめる存在といえましょう。
素材のメノウの色層の暴れようはかなりのもので、背景層のうねりの大きさは当ギャラリーで取り扱ってきたものの中でも過去最高の高低差があります。
年代はフレームに刻まれた文字から20世紀初期のものと思われますが全体的に様式の新しさを感じさせず、彫りの技術は19世紀のものにも劣らないレベルで精緻を極め、顔立ちも鼻梁が高くまっすぐに通った古代ギリシャ的な古典的な雰囲気。
またシルエットの取り方も20世紀のそれではなく古い様式で取られており、カメオ自体はフレーム年代より少しさかのぼる物である可能性もあります。
フレームも後述します通り状態が完璧でアンティークジュエリーとしての価値も極めて高く、専門のショップで取り扱われれば7桁はくだらないものとなるでしょう。

石はサードニクス系のメノウで、細かく濃褐色と白色の層が入り乱れるストーンカメオの中でも特に複雑な石を使用。
かなり大切にされてきたと見え状態は完璧、経年の傷みは全く見られず、強いて言えば10時位置にインクルージョンか切り出し時のクラックかという細い線が2筋みえますが、表のみに走るもので裏まで通ってはおらず、また像にも影響が達しておりませんので、仮にクラックだとしてもここから割れる心配はしなくても良いものと見えます。

フレームは14ctゴールド製。
表のエナメル装飾はこの時代にはほぼ見られなくなっているものですが、連続した幾何学的な模様からはこの時代に流行したアールデコの影響が感じられるあたり、経験豊富な金細工師の手によって実際にこの年代に作られたものなのでしょう。
このエナメルの状態も非常に素晴らしく、ほぼ完全に残っております。
キャッチはカニカン式で、20世紀初期に主流だったもの。
もちろん現役でピンはしっかり留まり、ペンダント金具も曲がりや折れもなく完全な形を保っております。

裏には刻印があり、それによると1919年9月25日にプレゼントされたもののようです。
1919年9月といえば第1次世界大戦終結から1年もしない時期。
裏面の刻印には”両親の懐かしい思い出に/ケイト叔母さんからジェーンへ”とあり、本作が生まれた経緯を考えさせられます。