縦：約53mm
横：約37mm
作者：チーロ・ヴィティエロ
QR：アーティスティッククオリティ

1970年代前半、次世代の巨匠となる名匠が多く生まれた世代。チーロ・ヴィティエロ氏はその世代のひとりです。
現在独特なプロフィールの作品を主な作風として21世紀の新しいカメオの先端をいく作者で、師弟関係については伝え聞かないものの、作風からはフランコ・スカーラ氏の技法が読み取れるあたり、スカーラ氏に直接指導を受けたか影響を受けたとみられます。
2010年頃からモダンカメオは2つの系統に分かれてきている傾向にあり、19世紀の作品に回帰する系統とさらに新しい作品を模索する系統とに分かれているうち、ヴィティエロ氏の作風は後者のもので近年モダンカメオの主流となりつつあるものです。
前世代の作品と比べると目が大きくどこか抽象的な作風はこれら新世代のカメオとして特徴的なもので、フランコ・スカーラ氏の近年の作品を筆頭に向上心に満ちたベテランから若手まで複数の作者にみられるものとなってきております。
日本国内の中古市場の作品は90年代のものが中心であり、新品を取り扱う店舗においてもこうした最新の作品は避ける傾向にあるので（日本宝飾業界の保守的な方針と合わないものとみられ、新入荷があっても2000年頃の古い作品という傾向にある）まだまだ新鮮さを感じる作風で、今後もさほど入荷は無いものと思われる一方で、ヴィティエロ氏を含む現地の作家たちは日本のカメオ市場の変化をしっかりと感じ取って独自に販路開拓を行っており、結果としては日本では停滞しつつも世界的には新しいスタンダードのひとつとして躍進していくものと思われます。
もちろんヴィティエロ氏自身も作品制作に打ち込みながら複数の弟子を取って次世代の育成につとめており、今後も新時代の主流のひとつとして名を残していくことでしょう。

今回のお品物はスタンダードラインのひとしな。
パッと見た感じではセカンドラインの作品と同様に見えますが、同じなのは大まかなシルエットのみで、意図的にディテールを省略されやや大味に仕上げられたセカンドラインと比べると画面内の構図とディテールのバランスに秀でており、細かく彫るべき部分を省略せず彫られているのは一目瞭然です。
当ギャラリーにおいて扱っているヴィティロ氏の作品は現在3段階、計9作品ありますが、パッと見てどのランクに属する作品か容易に見分けがつくのはヴィティエロ氏の作り分けの器用さをよくよく表しております。（蛇足ながら、私自身絵を描く身なのでよくわかるのですが、グレード分けをきっちりやるというのは意外に難しい事なのです）
モチーフは萌え出る芽を髪にあしらった女性。
さまざまなグレードの作品をいくつも見せていただいた中で最も気に入って譲っていただいた1点で、全体的に色の濃い貝を好みそれらを扱うことに長けるヴィティエロ氏らしい巧みな色の濃淡の扱いで表現された緩やかな空気の流れの美しさ。
そこに感じられるのは春の風の温かさや土と若草の香り。
作者ご自身によるタイトルは”春風の静けさ”です。

貝は濃いコーヒー色の地を持ったサードニクス。
白色部にも淡黄色が乗るものが多いヴィティエロ氏の作品の中では色別れのいい貝です。
裏にはセカンドラインの”gabriel”とは異なるチーロ・ヴィティエロ氏のスタンダード以上の作品に入るモノグラム化されたサインがあります。
工房直送の新品であるため保管の傷みはなく、素材由来のヘアラインも一切ない完品です。



※新作カメオは時価の半額を基準として価格を決定している古物と比べ多少割高となっております。（それでも一般的な時価は超えないよう調整しております）
もちろん買い付けの価格も古物市場の同等品を購入するより高額ではありますが、そもそも古物の取引では現職のカメオ彫刻師たちには1ユーロの利益にもならないことから、当ギャラリーでは現職作家たちへの、そしてカメオ文化の継承を支援するという観点をもって、積極的に作家本人から作品の買い付けを行っております。
当然、こうした当ギャラリーの売り上げはさらなる現職作家たちからの作品買い付けへ充てていきますので、古物と比べて割高になる点は、カメオ文化の将来への投資としてご理解いただければと思います。