縦：約33mm
横：約25mm
作者：－（アンティーク）
QR：カタログクオリティ-

彫りの美しい人気のアンティークハードストーンカメオの入荷です。

現在でこそ機械生産がおこなわれ大量生産されているメノウを素材としたハードストーンカメオ。
カメオの歴史においては1970年代より作られ始めたもので、それより前は人が手作業で鋼より硬いメノウを彫って作っていたため、希少性も価格も現在の比ではありませんでした。
今回のお品物は16世紀のイングランド及びアイルランド女王、エリザベス1世をモチーフとしたカメオです。
同時代の政敵でもあったクイーン・オブ・スコッツことメアリー・スチュアートと共に19世紀のイギリス国民間で人気が高く、カメオの題材としてもしばしば見られます。
あちらは現代に続く英国王家直系の祖である点で人気の一方こちらはイングランド国教会の始祖である点で人気があるようで、それぞれに別の理由で好まれている経緯から、彼女らが存命していた当時メアリー・スチュアートはエリザベス1世の治世において処刑される形でその人生に幕を下ろしたにもかかわらず、その処刑した側と処刑された側、両方が後の世において好まれ、様々な美術品や芸術品のモチーフとなるという状態となっております。
今回はエリザベス1世をサードニクスに彫り込んだカメオで、現代のストーンカメオとは全く異なる19世紀のカメオらしい立体的かつ緻密な彫刻が美しい逸品です。
もともとストーンカメオはその素材によって像の厚みが左右され、こういったサードニクスやオニキスといった濃色の地を持ったメノウではあまり厚みのある像が作れないものなのですが、本作は限られた淡色層を巧みに使って複雑な造形を美しく描写しており、ひとつひとつ盛り上がった襞襟や高く彫りあげられた冠、繊細にして正確緻密なイヤリングや真珠のネックレス、そして豪奢なドレスのレースや模様まで、ほとんど肌以外はなめらかな部分が無いほどに細かく彫りが入れられております。
ストーンカメオの製法というのは固定した母材に彫刻刀で彫り込むのではなく、逆にろくろに固定した砥石に母材の方を当てて彫っていくもので、そのような製法でどうやったらこのような細かな彫刻ができるのか…皆目見当もつかないようなディテールの多さです。
素材の制限によって厚みこそスモーク系のメノウのカメオには及ばないものの、彫りの細かさとその手数の多さで言えば過去最高の作品であり、後述の欠けがなかったなら間違いなくカタログクオリティ以上のランクとなっていたでしょう。

石は天然のサードニクス系のメノウ。
濃い褐色の地と淡黄色の像はまるで貝のサードニクスのようですが、そのサードニクスという名称の大本はまさにこのメノウのサードニクスで、いわば本式のサードニクスカメオです。
状態は1点を除いてかなり良いのですがその1点が大きな問題で、冠の部分に大きな欠けがあります。
表裏ともに縁に欠けはなく、イヤリングや髪、ドレスの装飾といった通常欠けやすいところにもダメージが見られないにもかかわらず冠に大きな欠け。
周囲がこれだけ綺麗なのにどういった経緯でここだけが欠けたのか…非常に残念ではありますが、制作から150年前後は経っている作品、その時間の中で完全に失われることなく現代に残っているのは、まだ幸運というべきでしょうか。
ともあれ、当ギャラリーの規定に則り表面に損傷が見られる場合は価格に反映するということで、健全な状態である場合の半額での掲載となります。