縦：約41mm（カメオ38mm）
横：約30mm（カメオ28mm）
作者：－（アンティーク）
QR：カタログクオリティ

高彫りが目を引く美しいアテーナーのハードストーンカメオの入荷です。

現在でこそ機械生産がおこなわれ大量生産されているメノウを素材としたハードストーンカメオ。
カメオの歴史においては1970年代より作られ始めたもので、それより前は人が手作業で鋼より硬いメノウを彫って作っていたため、希少性も価格も現在の比ではありませんでした。
今回のお品物は1900年頃に作られたとみられるアテーナーのカメオ。
アンティークのストーンカメオの素材となるメノウはいくつかの種類に分かれ、だいたいオニキス、サードニクス、それにスモークや青、橙などのカラーのものがみられます。
その中で最も多いのは圧倒的にスモークのメノウ、次いで赤色のサードニクス。
この2つでハードストーンカメオの大半となり、ごくわずかにオニキスと色メノウのものがみられることとなります。
これは産出量のこともあるのかもしれませんが、素材として像を彫るほど層に厚みがあるのがほとんどスモークのメノウに限られるという理由があったようで、古いストーンカメオの中でも高彫りの作品はそのほとんどがスモークのメノウでできています。
一方今回のカメオはサードニクス系のカメオながらかなり像に厚みがあるお品物で、モチーフはアテーナー。
カメオの世界では甲冑を纏った姿で描かれることが多いのですが、本作では珍しくキトンに身を包み、自らの守護樹であるオリーブの冠を戴いた姿で描かれております。
どことなく20世紀前半のような雰囲気がありながら、像は19世紀のクオリティというカメオで、ディテールはすべて繊細かつ緻密で正確。
仕上げも丁寧で磨き斑のないマット調の肌にツヤ出しで綺麗に磨き上げられたオリーブの葉や衣類と、場所によって仕上げを変えてあり、このあたりも19世紀のハイクオリティなハードストーンカメオと同様です。
先述の通り層の厚みに恵まれた素材を活かした像は高く、背景面からかなり浮かせて彫られているのでコントラスト良好。
良質な素材と優秀な技術とが合わさって生み出された古き名作です。

石は天然のカーネリアン系のメノウ。
かなり色層が安定しているようで、この時期の手彫りカメオとしては珍しいことに紅褐色の背景層にうねりが見られません。
背景が平坦なものは偽物が疑われるのでもちろん確認済みで、貼り合わせではなく間違いなくワンピースのカメオです。
状態は非常によく、写真ではあらかじめ言われてもわからないと思いますが、像の5時位置の縁に小さなチップがあり、これが本作唯一の傷みです。

フレームは天然のケシパールを巻いた当時物。
金属はローズゴールドだ思いますが、品位がわかりません。
また完全にオリジナルではなくブローチ金具は付け替えられております。
元はキャッチが右に、ピンが左にと通常のブローチと金具が逆についていたようで、これを通常通りキャッチを左、ピンを右に付け替えた様子。
ピン元の方はロウ付けではなくカシメで留められており、くるくる回るようになっています。
この付け替えの時期は金具の様式からすると50年代か60年代と思われ、この際落下防止用にチェーンもつけられており、手掛けた職人の丁寧な仕事ぶりが垣間見えます。