縦：約65mm
横：約48mm
作者：ジョヴァンニ・アメンドーラ
QR：アーティスティッククオリティ

風景図の大家ジョヴァンニ・アメンドーラ作のカメオです。

ジョヴァンニ・アメンドーラ氏は日本でも非常に人気のある作者で作品も多く見かけますが、その殆どが風景、絵画調のカメオです。
絵画風の構図というのはモダンカメオの特色であり、モダンカメオの創始者にして20世紀カメオ界の巨匠ジョヴァンニ・ノト氏を端としますが、アメンドーラ氏はそのノト氏の直弟子の一人として教えを受けておりました。
極めて優れた彫刻家であったノト氏の流れを受け継いだ作者の多くはノト氏の作風を模倣する形となりましたが、アメンドーラ氏はまさに絵画調カメオの源流から派生しながら独自の作風を確立せしめた屈指の名匠といえます。
また、モチーフには人物よりもむしろ馬を多く彫り、その頻度は出来の良い馬のシェルカメオをみたらアメンドーラ作といってもいいほどです。
現在は"Mastley"ことマッシモ・バルツァーノ氏およびスタニスラオ・エスポジート氏のコンビや方向性が違うもののチーロ・アッカニート氏も良い馬のカメオを作るものの、やはりまだまだ馬のカメオといえばジョヴァンニ・アメンドーラというイメージなのではないでしょうか。

今回のお品物は、アメンドーラ作の定番、馬を描いた大判カメオです。

本作はジョヴァンニ・アメンドーラ氏の作品としては中間期の作品です。
年代は80年代中頃で、サインがより古い筆記体のものと新しいデザイン化されたものとの間、形式はデザイン化されているものの後年のもののように間のつまった体配ではなく手探りな感じが残っております。
やや古めの作品と言えど、もっと古い筆記体のサインの時点で馬のカメオを多く作っていただけあり、本作の時点では後年のものと変わらない彫りを実現し、ノト氏から受けたカメオの教えもあってか構図にも優れております。
とりわけ構図感覚については数いるカメオ作家の中で特段優れている作者であり、画面内の配置にも意図が感じられるものが多くみられるのがジョヴァンニ・アメンドーラ作の特徴でもありますが、本作も画面右にはさりげなく空白をあけつつ（空白に現在の作者はあまり彫らない丁寧で細やかな木々を配置し違和感を感じさせない点、非常に見事です）馬は画面左に寄せられ、右前脚はいまにも画面外へ飛び出してきそうな位置にあります。
画面のパースは馬車で上手く表現しており、画面右奥から左手前へ走ってくる風景を描いたものであることも示されており、先述の馬の描写とあいまってよく動きを感じさせる構図となっております。
また、空など空白部分はみがきあげるのではなく筆のタッチのように彫り筋をいれて埋めるのはアメンドーラ氏特有の技法で、優れた構図とこうした細かなタッチでもってセピア色に色づいた絵のような雰囲気を持たせており、絵画と彫刻とを程よい比率で混合して作品に昇華させたノト氏の弟子のなかでもとりわけ優れたものを作ったアメンドーラ氏の名に恥じない逸品といえましょう。
現在もアメンドーラ作の人気は根強いなか出物も少なくなってきた昨今、アメンドーラ作と言えばこういうものという典型的な作例である点も評価が高く、オールドモダンの風雅を残す作としてコレクションにひとつは欲しい品です。

貝は濃いコーヒー色の地に薄い中間層をはさんた白色の層のサードニクス。
裏面には貝の自然の荒れがあるものの、とりたて目立つ傷は見られません。
ヘアラインもなく、しいて言えば高彫りにされた鞭の竿部分が欠けているくらいで、40年近く前の作品としては綺麗な物といっていいでしょう。
しかしながら、仮に鞭まで完璧であれば、出来の良さと相まってもう1ランク上の評価ができた点でやはり惜しく感じるところがあるため、この点も価格へ反映して少しお安くしております。

フレームはK18製。
80年代の様式で針先カバーのついた風車式のピンキャッチがついております。
日本でカメオが流行した当時非常に高い人気を誇ったアメンドーラ氏の作品だけに枠の造りは豪華です。
バチカンも付属しており、ペンダント使用とブローチ使用、ともに問題なくご使用いただけます。