縦：約53mm（カメオ43mm）
横：約35mm（カメオ23mm）
作者：サウリーニ（おそらくトマゾ・サウリーニ）
QR：カタログクオリティ

作者についてのご紹介は、当ギャラリーのメニューよりBLOGをご覧いただき、記事の"作家02.トマゾ・サウリーニ＆ルイジ・サウリーニ"をご覧ください。

サウリーニ親子の名声を知らしめた地イギリスより、サウリーニ作カメオが入荷いたしました。

今回のお品物は、サウリーニ作の一般顧客向けのシェルカメオ。
サウリーニ作で女性像のカメオは数が少なく、おそらく当時裕福な夫人のオーダーでパートナーの肖像を作っていたものと思われます。
写真をご覧になってわかるように本作は一度割れて、割れた角を落として形を整え再度ブローチにされたと思われるものです。
サウリーニのサインは通常表の縁に入れられるのですが、本作はサインのあった部分が割れて欠落しており、サウリーニ親子のどちらの作品か判別できなくなっているものの（ただしおそらくくトマゾ・サウリーニ）、サウリーニ作であることは間違いなく、外周は破損があるものの像は摩耗も少なく綺麗で、サウリーニらしい写実性に富んだ美しい像をお楽しみいただけます。
買い付けに際しては状態を重視し、大きな欠損のあるカメオの取り扱わないのが当ギャラリーの方針ではあるものの、他でもないサウリーニ作であることとサウリーニ作の真価は背景になく像にあること、そして破損してなお人の手を伝ってきたアンティークの名品であることを鑑みて特別に取り寄せた一品となります。

なお、本作は私の手元に来た時点で現在の形状のルースという状態でした。
通常ルースで入ってきたものはルースのまま展示しているのですが、こうした変則的なカメオ（とくにこうしたデリケートな作品）は持ち込みの加工も断られることが多いと言われますので、私の方であらかじめアンティークのケースフレームを模して制作いたしました。

貝はカフェオレ色に綺麗な白色ののった上質のサードニクス。
背景部に細かなヘアライン、2時半の位置に割れたときについたヒビ、像は首筋に傷があるものの、摩耗は少なくディテールがよく残っております。

長い間人の手を介してきた間、割れて左右の背景部を失ったのち丸く角を落として再制作にあてられ、またかつてのブローチ加工時に貝に火が入った（これはアンティークでは珍しくないことではある）痕跡があるなど、無傷を完璧とする視点からすれば欠点だらけであることに違いありません。
一方で人の手を渡ってきたものを愛でることこそアンティークの醍醐味でもあり、先述の通り私が本作を買い付けてきたのも、アンティークゆえの時間の流れを加味すれば現状の欠点を補って余りある、そしてまたそうして人の手を伝わってきた本作をここで無用の品とさせるのもしのびないと思ったためです。
本作がブローチとなったのは、少なくみてもこれで3度目。
生まれたときから少なくみても150年の時を経て、故郷の地より遠く離れたこの場で、さらに人の手を伝って行ってくれたらと思います。

フレームはAg950の銀製。
すべて私の手作りのもので、基本構造は19世紀のフレームと同じに作っています。
金具はC型クラスプより安定感のある鉄砲型で制作し、横向き防止の金具もつけて、機能的には現代のフレームと同等の機能も持たせてあります。
現在ブローチ用の金具しかつけておりませんが、バチカン装着も可能な構想で制作しておりますので、ペンダント機能の追加をご希望の方は発送前にお知らせくださいませ。