縦：約54mm（カメオ43mm）
横：約43mm（カメオ33mm）
作者：－（1930年頃）
QR：アーティスティッククオリティ

アメリカ発、ミッドセンチュリーの大型のハードストーンカメオが入荷しました。

ハードストーンカメオというのは、一般には柔らかい凝灰岩（ラーヴァ）に対して硬度が高いメノウを用いたカメオになります。
現在ドイツはイーダーオーバーシュタインで作られるカメオもメノウですが、一般に出回るものは人工的に着色したものを使っており、完全に天然のものではありません。
一方この時代のものは天然のものであり、まず使える素材の石の産出量も少なく、加工の難しさもあいまって出来の良い作品はかなり少なくなります。
また、加工法においても当時と今では大きく異なり、現在はほとんどのカメオは超音波彫刻やレーザー彫刻により大量生産されますが、レーザーより先んじた超音波彫刻でも1970年代に実用され始めた技術であり、それより以前のカメオはすべて職人の手彫りにより作られております。（これらは絵に置き換えて言えば、超音波彫刻が版画、レーザー彫刻がコピー、そして手彫りが肉筆に相当すると考えていいと思います）
俗にストーンカメオはシェルカメオよりも格式が上であり高級品であると言われており、今でもストーンカメオのほうが上であると思っている人は少なくありませんが、それはまさにこの1970年代以前の話であり、現在は平均的にはすべて手彫りのシェルカメオのほうが高級品になっております。

今回のお品物は1930年頃に作られた手彫りのハードストーンカメオです。

先述の通りストーンカメオ彫刻の機械化は70年代からであり、本作の作られた時代はまだ手彫りで作られておりました。
従いまして本作も職人手彫りのストーンカメオとなり、やはり現代の機械彫りカメオと比べると彫りがしっかりしていて陰影が強く出ているのがわかるかと思います。
石は天然のカーネリアン系のメノウで、この類のメノウは白色層に厚みが無いようで、自然と像の高さもさほど高くないものが多くなりますが、こちらもその例にもれず古いストーンカメオとしては像が低くなっており、そういった点ではどこか現代のカメオにも似た絵画的な色が強い空気が感じられます。
洋服のラインはシンプルに、またカメオによくみられるような真珠の首飾りなどもなく、それゆえにパッと目を引くのが美しく彫られた巻き毛の髪といったような、鑑賞者の目線を誘導する構図となっているのも絵画的で、まさにストーンのオールドモダンといった雰囲気のカメオです。

石は赤系の地と白色の上層を持つカーネリアン。
表にはうっすらと白色層を残しているのか、スミレ色のような美しい背景色となる一方で裏側は赤色をしております。
6時半の縁に目立たないごく小さなチップの痕跡とそれを補修した跡がある以外は外観上の傷はなく、光に透かすと8時半の位置から中央にかけて薄いクラックが見られるものの、表面からは光を反射させて精査してもクラックのラインが見つからない自然の内包クラックです。

フレームは14ctゴールド、裏面に銀ロウのあとがあることからわかるように、貴重なハンドカーヴドストーンカメオに合わせて金細工師が丁寧に作り上げたフレームです。
手彫りとしては大判の40mmオーバーのカメオに負けず幅広に作られており、飾りは少ないながらに豪華な感じを存分に引き出しております。
留め具はミッドセンチュリーの特徴である古典的なカニカン式で、セーフティチェーン用の丸カンも残っておりますのでペンダント使用も可能です。