縦：約93mm(カメオ：55mm)
横：約47mm(カメオ：42mm)
作者：カルロ・パルラーティ
QR：カタログクオリティ

20世紀後半を代表する彫刻家カルロ・パルラーティ氏によるシェルカメオです。

20世紀の彫刻の鬼才カルロ・パルラーティ。
カメオについて調べる人が真っ先に覚える作者のひとりであり、その特徴的なデザインは一度見れば忘れることはありません。
カルロ氏が活動し始めた当時、すでにジョヴァンニ・ノト氏の活躍によってモダンカメオの時代が到来しており、華やかなプロフィールや絵画のカメオ化などが一般的になりつつありましたが、カルロ氏はその流れに身を任せることなく一度古典的な構図へと立ち返り、そこから独自に再スタートする形で独特の生命観や宗教観などを描いてゆきました。
比較的単純なプロフィールのカメオにおいても、構図は19世紀のアンティークカメオに通じるものがほとんどを占めており、カルロ氏の解説においても古典的なようでいて現代的でもある革新性、市場からの需要を無視し自身の芸術性を追求する反抗性についての記述がありますが、その構図に表れている傾向はまさに、カルロ氏のそうした取り組みが形になったものと言えましょう。
現在は娘のパトリツィア氏がその造形を受け継ぎ、一部ではパトリツィア氏はいずれカルロ氏を超えうるとも言われているものの、そもパトリツィア氏は造形こそカルロ氏を真似れどもその芸術性についてまで受け継いでいるわけではなく独自の制作に打ち込んでおり、やはりカルロ氏の独創的な世界はカルロ氏だけのものであるということを示すように、現在も高い人気を維持しております。

本作はそんなカルロ・パルラーティ氏のプロフィールカメオ、1980年代の作です。

カルロ氏の制作のなかでもっともエネルギッシュであった80年代の作品で、このころは手のかかる彫刻作品や絵画などにも精力的に打ち込んでいたためかシェルカメオの作品数はそう多くなく、90年代以降の作品と比べるとぐっと数が少なくなります。
80年代以前のものは、古物市場に出るカルロ氏のカメオ10枚のうち2枚あればいい方といったところでしょう。
また作品より感じられる芸術性も一段異なる印象を受け、80年代のものは彫刻作品にもみられるカルロ氏の芸術感のひとかけらを貝の中に落とし込んだといいましょうか、比較的商業色が強く”そういうデザイン”として固定化された印象の強い90年代のものと異なり、髪のなびきや周囲の造形も不規則性が高く、動きのある生命観をより強く備えております。

また90年代は力の加減が難しくなったのか、彫刻時に圧をかけすぎて褐色層に亀裂の入ったものが非常に多くみられるなど状態のよくないものがかなりある（ちなみに背景部を切り落とした切り抜きカメオは、この時背景が完全に割れてしまったものを再利用した形のものと思われ、80年代以前の作品では見られない傾向である）一方で、状態のいいものが多いのも80年代以前の作品の特徴であり、本作は外周部にわずかにヘアラインが見られるのみで傷みといえるようなものはありません。
また、表面に欠けがあることもかなり多く無傷のものはめったに見ないカルロ氏の作品にあって、表にも（特に下部のうねりなどは非常に高彫りでちょっとぶつけたりすれば欠ける恐れもあるほどの繊細さでありながら）欠けや傷みなどみられず、極めて貴重な完品のカルロ・パルラーティ作カメオとなっております。

フレームは750の刻印がある、イタリア製の18ctゴールドフレーム。
様式としては現代のものとは一線を画すもので、これは19世紀のイギリスのアンティークジュエリーの様式です。（ただしおそらくフレームの制作年代は1990年代後半以降。古典的様式をふまえて新規に制作されたもの）
飾りにはダイヤモンドと黒七宝、それにマデイラシトリンのような石も使われており、アンティークの様式を踏襲したカルロ氏の作品に合わせて特別にあつらえられた金工細工の枠です。
造りには妥協がなく、金飾りは分厚く裏抜きもない豪勢なもので、現代の一般的なフレームの3倍から4倍の金が使われていると思われます。

カメオ、フレームともに一流の職人の手による最上級の作となります。
カメオ愛好家の方はぜひキャビネットコレクションへの追加をご検討くださいませ。