縦：約53mm（カメオ43mm）
横：約44mm（カメオ35mm）
作者：－（アンティーク）
QR：カタログクオリティ+

イギリス直輸入のアンティークカメオです。

日本のカメオの歴史は浅く、1980年代ごろからの流通となっており、それより古いものはあまり見かける機会がありません。
たまに見かけるものも質がいいとは言えないものが大半を占め、アンティークカメオが豊富に残る海外市場においてでもただ古いだけ、またフレームがそれなりの出来でもカメオそのものが二流三流というものが多く、カメオそのものが素晴らしいものはやはり高値で取引されております。

さて、本作はモチーフとしては珍しい、ダフネーを描いたと思われるカメオです。

描かれた女性像は頭に月桂樹の冠をかぶり、これが男性であればアポローンに間違いありませんが、ご覧のように女性像ですので、アポローンの月桂冠の由来となったニンフのダフネーであると考えられます。
特筆すべきは全体的な雰囲気の優しさ・柔らかさで、女性像を描いたカメオはそれこそ無数に存在すれど、これほど女性らしい柔らかさをもった像はミュージアムクオリティにもそうあるものではないと感じます。
表面にはツヤがありますがこれはオイルなどではなく素の地肌で、肌は彫刻刀の彫り跡が一切残らないほどきれいに整えて若くみずみずしい肌を表現し、また全体的にはさほど厚い部材ではないにもかかわらずメリハリを持たせて膨らみをつけて柔らかな肌を表現しております。
その一方で、柔らかなウェーブを描いて降ろされた髪は1本1本緻密・精密に彫られ美しく、その髪に飾られた月桂冠の枝は0.5mmほどの太さしかないにもかかわらず均一に損傷なく彫り上げられ、背面のチェーンの精密さもまさしく目を見張るほどの仕上がりです。
非常にシンプルなモチーフゆえにバッカンテやフローラのようなインパクトこそありませんが、技術的に見れば超一流の職人の手によるものであることは疑いようがありません。
彫りだけで言えば間違いなくミュージアムクオリティレベルにあり、仮に素材にもっと厚いものを用いていて3層彫りになっていれば確実にミュージアムとなり、価格も5割増し以上になるところです。
ランクの設定に関しては私の主観を除いて客観的な要素のみを考えた結果アーティスティッククオリティとしましたが、幅の広いアーティスティッククオリティの中でも限りなくミュージアムクオリティに近い作品と言って全く差し支えないと、自信をもってお勧めできる逸品です。

貝はコルネリアンで、部位でいえばおそらく殻口から中ほどまで進んだところの外周部でしょうか。
特に厚みがあるわけでもなく背面の色が最も濃い部分でもないという、部材としては決していいとは言えない平凡なものでありながら、それをこれほどの作品に仕上げる技量はまさに職人技です。
表面11時の位置からやや左下にかけてヘアラインが1筋みられるもののそれ以外に傷みはみられず、ご覧のように摩耗もなく完璧なディテールを保存しております。

フレームは14ctゴールド。
時代の例によって刻印がありませんが、買い付け元にてテスト済みです。
古典的な覆輪留めのフレームでこちらもカメオ本体同様派手さはないものの、外周をよく見れば金線5本を使った丁寧な模様付け。
ピン留めはC型クラスプですがもう1本の金線を用いてバネによるロック機能を持たせ、またアンティークのフレームには稀にしか見られない下向き防止の金具がみられます。

カメオ・フレームともに派手さを抑えつつ最高の腕と丁寧さで作られた、最高級の作品に仕上がっております。