縦：約40mm（カメオ39mm）
横：約32mm（カメオ30mm）
作者：－（アンティーク）
QR：カタログクオリティ

日本初公開、素晴らしいアンティークのハードストーンカメオです。

ハードストーンカメオというのは、一般には柔らかい凝灰岩（ラーヴァ）に対して硬度が高いメノウを用いたカメオになります。
現在ドイツはイーダーオーバーシュタインで作られるカメオもメノウですが、一般に出回るものは人工的に着色したものを使っており、完全に天然のものではありません。
一方この時代のものは天然のものであり、まず使える素材の石の産出量も少なく、加工の難しさもあいまって出来の良い作品はかなり少なくなります。
また、加工法においても当時と今では大きく異なり、現在はほとんどのカメオは超音波彫刻やレーザー彫刻により大量生産されますが、レーザーより先んじた超音波彫刻でも1970年代に実用され始めた技術であり、それより以前のカメオはすべて職人の手彫りにより作られております。（これらは絵に置き換えて言えば、超音波彫刻が版画、レーザー彫刻がコピー、そして手彫りが肉筆に相当すると考えていいと思います）
俗にストーンカメオはシェルカメオよりも格式が上であり高級品であると言われており、今でもストーンカメオのほうが上であると思っている人は少なくありませんが、それはまさにこの1970年代以前の話であり、現在は平均的にはすべて手彫りのシェルカメオのほうが高級品になっております。

今回のお品物は19世紀後半のストーンカメオを使ったブローチです。

アンティークストーンカメオの中でも珍しい色メノウを使ったもので、さらに珍しい大粒かつ彫りのいい素晴らしいカメオが使われています。
アンティークらしい厚みのある像はくっきりとした白色層にて表現されており非常に美しく、その下の鮮やかな橙色の地とのコントラストも見事です。
大きさはアンティークストーンカメオとしては大型の1.5インチ（約38mm）。
比較的大型のものではスモーク状のメノウであることが多く、この大きさでコントラストの強いメノウカメオはなかなか見ることが出来ません。
側面をみれば橙の層の下に白色の層、さらにその下の黄色の層と自然の層が続くのが見て取れ、良質な天然メノウの美しい色合いとそれを彫刻作品に仕上げた当時の職人の仕事の素晴らしさを改めて感じいります。

状態も素晴らしく、像はもちろん側面にもチップやクラックがない完璧さ。
裏面にはなにかサインのようなものがありますが、作者銘なのかかつての所有者の名なのかは不明です。

フレームも当時物で、地金は9ctローズゴールド。
ごくシンプルなものですが、そもそも橙のカメオに金の枠を張り出して付けても色合いがかぶってしまうので、枠はなるべく目立たないように、カメオを全面に押し出した作りをしたのでしょう。
先述の通り側面も完全には覆わずにメノウの層をみることができるように巻いてあり、また裏面やピン周りの丁寧な作りを見ても、本作が何かしらの不足があってこのような枠のデザインになったのではないことが伝わってきます。

全体的にシンプルながらに素材、仕上がりともに非常にハイレベルな作品で、なにが主となるのかを意識して作られた、当時の職人の美意識と技術の結晶です。