カメオ縦：約60mm
カメオ横：約80mm
作者：ジョヴァンニ・アメンドーラ
QR：カタログクオリティ


風景図の大家ジョヴァンニ・アメンドーラ作のカメオです。

ジョヴァンニ・アメンドーラ氏は日本でも非常に人気のある作者で作品も多く見かけますが、その殆どが風景、絵画調のカメオで人物よりもむしろ馬を多く彫り、その頻度は出来の良い馬のシェルカメオをみたらアメンドーラ作といってもいいほどです。

アメンドーラ氏以外では、同氏の弟子で最もジョヴァンニ・アメンドーラ氏の作風を忠実に受け継ぎ、風景図やアンティーク風の人物図もうまかったアントーニオ・スピタレッタ氏の活躍が期待されておりましたが、仲買いのディレクションと反りが合わずカメオの世界（ひいてはモダンカメオの流通の主力である日本の宝飾業界、そのバブルの頃から全く成長しない成金趣味・拝金主義的なやり方に表れている芸術に対する無知と無理解）に見切りをつけて引退してしまいました。
（ジョヴァンニ氏の作風と極めてよく似ていてAntonio Ammendolaとサインの入った作品を見かけることがあり、そちらについては調査中です）

現在は"Mastley"ことM.バルツァーノ＆S.エスポジートのコンビが良い馬のカメオを作るものの、やはりその構図力や躍動感においては熟練の名匠たるアメンドーラ氏に追いつけているとはいい難く、まだまだ馬のカメオといえばジョヴァンニ・アメンドーラというイメージなのではないでしょうか。

さて今回のお品物はそのジョヴァンニ・アメンドーラの世界を如実に表した一品です。

図案は2頭立ての馬車を駆る夫婦。
動きを感じる馬の描写はさすがです。

また写真でもわかるように主役のモチーフは背景から浮かび上がって見えるほどにメリハリを付けて彫りつつ、たった一つの石でさり気なく画面全体のバランスをとる構図力※もシェルカメオという独特の彫刻分野における熟練の度合いを示しております。

※奥行きを締めるだけなら馬の手前に石でもいいが、それでは馬の躍動感を抑えてしまう。さらにこの画における馬と馬車の位置関係は馬が手前で馬車が奥になるので、馬の手前を避けて馬車の手前に石を置くことで馬の動きを邪魔することなく、逆に馬車を抑えて奥行きを印象付けられる。画面に余裕のある大判だからできる画面演出。

そして特筆すべき点はその大きさ、なんと本作は横80mmの大判です。
面積で言えば平均的な50mmや55mm規格のおおよそ倍となる大作です。

カメオと一口に言ってもいろいろなものがあり一概に大きければいいとは言えませんが、ことこれほどの腕を持つ作者の、しかも風景図であるならば大きければ大きいほど良いのは言うまでもないでしょう。

貝の質は良くきれいな珈琲色、状態は極めて良好で、ヘアラインは馬車の後輪あたりに薄いものが1筋ありますが、ここは白色層の下になるので表からは見えません。
さらに太さ0.3mmほどしかない鞭をはじめ、手綱や馬の脚など極めて細く、高く彫られた部分にも欠損は見られない素晴らしい状態です。

金枠も当時物で、全てにおいて完璧な状態の貴重な逸品です。