縦：約50mm
横：約65mm
作者：パスクアーレ・オッタヴィアーノ
QR：カタログクオリティ

シェルカメオ界の巨匠のひとり、パスクアーレ・オッタヴィアーノ氏のカタログクオリティカメオ。

ジェンナーロ・ガロファロ氏、フランコ・スカーラ氏とともにモダンカメオにおいて高く評価される、名実ともに間違いなく現代最高峰の作者の一人、パスクアーレ・オッタヴィアーノ氏。
特徴的な透明感のある彫りと極めて細かな表現力は他の作者と一線を画しており、誰が見ても優れていると分かるものを作るという点においては先の二名の巨匠よりもインパクトのある存在です。
最近は息子のファビオ氏、甥のジーノ氏、また血縁者以外では近年マッシモ・バルツァーノ氏やチーロ・アッカニート氏など若手の名匠たちがどんどん綺麗なレースを彫るようになってきておりますが、やはりこの手の作風の筆頭はパスクアーレ氏でしょう。
しかしながら2020年現在、市場でもめっきり作品を見かける機会が減り、特にレースの透明感が増してくる90年代以降の作品は年に数枚程度しか見なくなってきました。
いまはまだ専門店に在庫が残っているとはいえ、現在すでに新作の発表もなくなっておりますので、在庫がなくなり次第入手することは非常に困難になってくると思われます。

さて、本作のモチーフはオッタヴィアーノ氏の作品としては珍しいニコラ・ランクレ画”鳥籠”。
横65mmというなかなか大きいカメオですが密度がものすごいためぎゅっと詰まった感じがあり、大きさを感じさせません。
かと言って手狭に感じるかと言えばそんなことはなく、また小手先の技術だけでなく全体的にバランスが取れた構図で安定感があり、絵画をモチーフとした作品を彫るときに一流のカメオ職人の仕事に見られる、元の絵をそのままコピーするのではなく独自に手を入れて自分の作品へと昇華させる技が本作にも見て取れます。
また本作がオッタヴィアーノ作の中で特殊である点として、像に立体感があるというのが挙げられます。
オッタヴィアーノ作といえば先述の通り透明感のあるレース彫りであり、当人もこれを自身の作品の特色としているわけですが、一方でこの白色層をぎりぎりまで彫り下げる手法では像の厚みを維持できなくなります。
そのためオッタヴィアーノ氏の作品は年代を重ねるごとにレースの透明感は増す一方で像の厚みは薄くなっていく傾向にあるのですが、本作はまだレースの完成を見る前であり、透明感が無い代わりに像に確かな厚みがあり、森の中に腰掛けて小鳥をみる3人を実に生き生きと描いております。
通常この年代のオッタヴィアーノ氏の作品はレースが未完成でいまいち見どころに欠ける作品が多いところ、本作に限ってはこの年代ならではで後年にはない良さに富む点で非常に特異的な逸品となっております。

貝は濃いコーヒー色の地と綺麗な白色のサードニクス。
ヘアラインもない極上の逸品で、裏にはG.Borrielloのサインがあり同氏のカッメイ社を通して流通した事が伺えます。

フレームはK18の覆輪型のフレーム。
画面いっぱいに描写が広がる本作において覆輪型のフレームをつけるのはかなり厳しいのですが、本作においては画面を極力侵さないよう配慮した形の覆輪となっており、カメオ作品を優先することを忘れない仕事の良さが伺えます。
綺麗さだけならば1mmから2mmほどカメオにかぶせる形で留める現在のフレームの方が綺麗ですが、もし本作にそのタイプのフレームがついたら、本作の魅力はだいぶ削がれたことでしょう。
フレームの感じからすると80年代、キャッチは風車型で鉄砲型ほど安定してはいないもののしっかり止まります。