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アンティーク(推定19世紀末) ”果実の女神ポモナ”
縦:約48mm
横:約39mm
作者:-(アンティーク)
QR:ミュージアムクオリティ
久方ぶりの更新、アンティークでは三層彫りの逸品が入荷しました。
19世紀より現在にかけて高い人気を維持し続けているバッカンテとフローラ。
特に厚みのある彫刻的な表現に富んだ19世紀の名品は大変に人気が高く、カメオ全体においても最高級といえる作品を多く擁しますが、そんな中、まれに他の植物が混じっているデザインが見られます。
当ギャラリーにて過去に展示したものでは”アンティーク(推定19世紀中期) 箱付きアートピース ”花々の女神””が該当し、基本的には花を多く飾りながらもザクロ、ブドウ、リンゴが見られた逸品でした。
こうした作例はほかにも知られておりますが、中でも特に果実の種類が豊富なものは、果実の女神ポモナであると解釈されております。
とはいえ、麦穂が目立つ中で少量の果実などだと収穫を強く意識させることからデメテルと解釈されたり、”花々の女神”のように花がメインであればフローラと解釈されたり、明確にポモナと解釈できる作品はかなり少なく、私もそうした作品を見たことは2例しかありませんでした。
今回の作品はそのうちの一つで、頭に飾られた植物はほかの女神たちをはるかにしのぐ種類がみられ、確認できるだけでも麦、木苺、リンゴ、桃、イチジク、ぶどう、そしてバラの花という多様ぶり。
葉も少なくとも3種、麦とぶどうとバラの葉が見られます。
そして特徴的なのは、それらがサルドニクスの三層彫りで表現されている事。
現代でもコルネリアンの三層彫りに比べるとサルドニクスのそれは珍しいのですが、19世紀の作品でサルドニクスの三層彫りはそれに輪をかけて珍しいです。※
詳しく後述の通りサルドニクスの外唇部はコルネリアンのそれに比べて様々な点で三層彫りに向かない素材であることがその理由ですが、今回のはサルドニクスの外唇部の中でもかなり厚い方であることから、普通に立体彫刻的な表現のついでに色分けを施したといった形なのでしょうか。
もともとの素材の制限からコルネリアンの三層彫りほどはっきり色が分かれているわけではありませんが、それでも植物には淡黄色~濃褐色というサルドニクス外唇部の上層色を使い、髪や肌には中層の白色を当てていること、そして背景部に下層の褐色をしっかり分けていることから見て、技術的にはかなり上手な職人の手による作品であることが明らかで、それこそハイレベルなカメオが揃う当ギャラリーでも稀な三層彫りの名品”花々を戴く春の女神”や”酒神の巫女”に匹敵するものです。
造形も美しく、黒目まで入った目とふくよかな頬、半筋から顎まで整った輪郭と、植物以外の点も大変にハイレベル。
素材の表現の差において先の三層彫りの名品両者より時価を落としているものの、彫りの面でいえば渡り合えるだけの仕上がりといって差し支えない逸品です。
※コルネリアンだと外周部でも三層彫りが作れるほか、外唇部だと上層の橙が厚くとれ美しく色分けができる。一方サルドニクスは外唇部でしか三層彫りを作ることができず、外唇部の上層の濃褐色層が薄いのでコルネリアンほど表現に幅がない。
従って使える部材の関係で単純に数が少なくなる他、あえてサルドニクスで三層彫りを作るメリットもさほどない。
またサルドニクスはコルネリアンよりはるかに大柄であるが、外唇部材の厚みは全体の大きさの割に薄くコルネリアンの方が厚くなることが多いため、彫刻色の強い19世紀の手法ではなおの事サルドニクスでは表現の制限が大きいのである。
貝はサルドニクス、珍しい外唇部。
通常かなり薄くなる濃色部でも厚みを残しているあたり、相当に厚い貝を使ったとみられます。
状態は極めてよく、高彫りで問題になる欠けは一切なし。
ころころとした果実、繊細な花や茎など、すべてにおいて欠損がありません。
裏面5時位置にストレス性のヒビがあるも、見た目より健全で光に透かさなければ見えません。
その他ヘアラインも少なく、裏面12時半位置と10時位置に薄いものが少数入るのみです。
フレームはバーメイル。
銀に金巻きで、金は比較的よく残っています。
変色があるものの、これは磨けばきれいになるものです。
ブローチ金具はC型クラスプ、ピンもしっかりしておりよく留まります。
写真には写っておりませんが、ピンに落下防止用のシリコンキャッチもつけて発送しますので、このままですぐに実用に供することができます。
横:約39mm
作者:-(アンティーク)
QR:ミュージアムクオリティ
久方ぶりの更新、アンティークでは三層彫りの逸品が入荷しました。
19世紀より現在にかけて高い人気を維持し続けているバッカンテとフローラ。
特に厚みのある彫刻的な表現に富んだ19世紀の名品は大変に人気が高く、カメオ全体においても最高級といえる作品を多く擁しますが、そんな中、まれに他の植物が混じっているデザインが見られます。
当ギャラリーにて過去に展示したものでは”アンティーク(推定19世紀中期) 箱付きアートピース ”花々の女神””が該当し、基本的には花を多く飾りながらもザクロ、ブドウ、リンゴが見られた逸品でした。
こうした作例はほかにも知られておりますが、中でも特に果実の種類が豊富なものは、果実の女神ポモナであると解釈されております。
とはいえ、麦穂が目立つ中で少量の果実などだと収穫を強く意識させることからデメテルと解釈されたり、”花々の女神”のように花がメインであればフローラと解釈されたり、明確にポモナと解釈できる作品はかなり少なく、私もそうした作品を見たことは2例しかありませんでした。
今回の作品はそのうちの一つで、頭に飾られた植物はほかの女神たちをはるかにしのぐ種類がみられ、確認できるだけでも麦、木苺、リンゴ、桃、イチジク、ぶどう、そしてバラの花という多様ぶり。
葉も少なくとも3種、麦とぶどうとバラの葉が見られます。
そして特徴的なのは、それらがサルドニクスの三層彫りで表現されている事。
現代でもコルネリアンの三層彫りに比べるとサルドニクスのそれは珍しいのですが、19世紀の作品でサルドニクスの三層彫りはそれに輪をかけて珍しいです。※
詳しく後述の通りサルドニクスの外唇部はコルネリアンのそれに比べて様々な点で三層彫りに向かない素材であることがその理由ですが、今回のはサルドニクスの外唇部の中でもかなり厚い方であることから、普通に立体彫刻的な表現のついでに色分けを施したといった形なのでしょうか。
もともとの素材の制限からコルネリアンの三層彫りほどはっきり色が分かれているわけではありませんが、それでも植物には淡黄色~濃褐色というサルドニクス外唇部の上層色を使い、髪や肌には中層の白色を当てていること、そして背景部に下層の褐色をしっかり分けていることから見て、技術的にはかなり上手な職人の手による作品であることが明らかで、それこそハイレベルなカメオが揃う当ギャラリーでも稀な三層彫りの名品”花々を戴く春の女神”や”酒神の巫女”に匹敵するものです。
造形も美しく、黒目まで入った目とふくよかな頬、半筋から顎まで整った輪郭と、植物以外の点も大変にハイレベル。
素材の表現の差において先の三層彫りの名品両者より時価を落としているものの、彫りの面でいえば渡り合えるだけの仕上がりといって差し支えない逸品です。
※コルネリアンだと外周部でも三層彫りが作れるほか、外唇部だと上層の橙が厚くとれ美しく色分けができる。一方サルドニクスは外唇部でしか三層彫りを作ることができず、外唇部の上層の濃褐色層が薄いのでコルネリアンほど表現に幅がない。
従って使える部材の関係で単純に数が少なくなる他、あえてサルドニクスで三層彫りを作るメリットもさほどない。
またサルドニクスはコルネリアンよりはるかに大柄であるが、外唇部材の厚みは全体の大きさの割に薄くコルネリアンの方が厚くなることが多いため、彫刻色の強い19世紀の手法ではなおの事サルドニクスでは表現の制限が大きいのである。
貝はサルドニクス、珍しい外唇部。
通常かなり薄くなる濃色部でも厚みを残しているあたり、相当に厚い貝を使ったとみられます。
状態は極めてよく、高彫りで問題になる欠けは一切なし。
ころころとした果実、繊細な花や茎など、すべてにおいて欠損がありません。
裏面5時位置にストレス性のヒビがあるも、見た目より健全で光に透かさなければ見えません。
その他ヘアラインも少なく、裏面12時半位置と10時位置に薄いものが少数入るのみです。
フレームはバーメイル。
銀に金巻きで、金は比較的よく残っています。
変色があるものの、これは磨けばきれいになるものです。
ブローチ金具はC型クラスプ、ピンもしっかりしておりよく留まります。
写真には写っておりませんが、ピンに落下防止用のシリコンキャッチもつけて発送しますので、このままですぐに実用に供することができます。