縦：約51mm
横：約42mm
作者：－（アンティーク）
QR：ミュージアムクオリティ

人気のモチーフ、聖母マリアに受胎を知らせるガブリエルを描いた受胎告知のカメオの奇跡的な逸品の入荷です。

アンティークカメオとモダンカメオの大きな違いのひとつに、モチーフの傾向があります。
1800年代はイギリスを中心に、そして1940年頃から1960年頃のモダンカメオの時代はアメリカを中心に流行したカメオ。
さらに時が下り1980年代より現在にいたるモダンカメオの時代は日本がその流通の主流となっております。
この市場の移り変わりでの顧客の需要の変化にこたえる形でカメオのモチーフは主流となるものが変わっており、アンティークではキリスト教の色の濃い作品も多くみられるも、現在は宗教色の濃い作品は少なくなってきました。
今回の作品はそうした面からみてもアンティーク色の強い一品、ガブリエルの受胎告知をモチーフとしたカメオです。
カメオの大きさは2インチ強、それに両端に翼が入るガブリエルは幅広のカメオが多い傾向にあり、本作も通常のこのサイズの横幅となる1.5インチ、すなわち38mmよりも少し広い42mm。
サルドニクスに比べるとずっと小さく、大きな母材が取れないコルネリアンのカメオとしては大判といえるサイズです。
その広い画面に描かれているのは大天使ガブリエル、聖母マリアに受胎を告知する姿。
受胎告知のカメオは基本的に品質の悪いものはないといっていいほどハイレベルですが、今回のは受胎告知はもちろん、19世紀のあらゆるカメオの中でも最高級の品質といえる逸品です。
それはもう、画像をご覧になっていただければお判りでしょう。
どこをとっても素晴らしいの一言ながら、その中でも20世紀以降のカメオでは絶対にありえない髪の描写は圧巻。
そして後述しますが奇跡的な状態の良さゆえ、これらのディテールが一切失われていないという点を含めてまさに美術・博物館級にして唯一無二というべき点に立つカメオです。

貝はコルネリアン外周部で1つの貝殻から1つしか取れない橙色の濃い部位。
とにかく経年劣化が無く、ディテールが全く失われていないばかりか背景部も磨かれたツヤがきれいに残っており、まるでつい先日彫りあがったかのような状態の良さです。
過去に数多くのアンティークカメオを取り扱ってきた当ギャラリーでも、間違いなく19世紀の作品でここまできれいなのは『豊穣の女神』くらいのもので、本作はその『豊穣の女神』よりもさらに綺麗で、決して誇張ではなく、今後この品質と状態を兼ね備えるカメオは出てこないのではと思う程です。
ヘアラインは0時位置から9時位置方向にかけて薄ヒビが4筋ほどあり、これが目視できるほか、目視できないものでは画面中央部、像の裏側に数筋あります。

本作、間違いなく過去に一度もアクセサリー加工されたことが無いデッドストックと思われます。
これほどのカメオを注文するとなるとかなりの地位の人物だったのでしょうが、ヘアラインがあったために納入されず仕舞い込まれたのでしょうか。
どうあれ21世紀もやや進んだこの時代においては、大変に貴重な作となった逸品です。