縦：約60mm
横：約45mm
作者：ジョヴァンニ・トゥルコ
QR：アーティスティッククオリティ

現代における異色の名匠ジョヴァンニ・トゥルコ作のカメオの入荷です。

ジョヴァンニ・トゥルコ氏は現在もっとも精力的な名匠のひとりです。
高校卒業後ナポリの芸術学校進学し彫刻を専攻、その後23歳からシェルカメオを彫り始めてわずか4年でトーレ・デル・グレコの美術展で最優秀賞を受賞したという天才的な経歴を持っております。
カメオ作者である前に彫刻家であったトゥルコ氏の作風は、比較的平面的で色の濃淡を重視する傾向にあるモダンカメオにおいては珍しくなったといえる純粋な彫刻色の強いもので、また派手な構図に走りがちな現在のカメオと違い構図はシンプルでバランスを重視するなど、現代の作者ではカルロ・パルラーティ氏やチーロ・フェラーラ氏といったごく一部の作者に限られる作風を持っている稀有な雰囲気を持っております。
彫刻色の強いトゥルコ氏のカメオは光の当て方で見え方が大きく変わり、正しい角度で光を当てることで素晴らしい臨場感と生命感を伝えてくれるようになります。

今回のお品物もまたかなり厚みのある貝を高く彫ったトゥルコ作らしい作品です。

モチーフは母子というより姉弟といった年齢差に感じられる二人。
このようなダブルフェイス程寄りの構図でも風景程引きの構図でもなく複数の人物を納めた構図というのは、現在では何気にトゥルコ作以外ではあまりみないもので（カメオ史における中興の祖たるノト作では比較的このような構図の物も知られ、その模刻作品は他の作者の物にもみるもののオリジナルを見ることはめったにない）トゥルコ氏の作風のひとつと言ってもいいかもしれません。
トゥルコ作によくみられるように派手さは無くディテールの描写も少なくて全体的な印象はシンプルながら、要所要所はしっかりと深く彫られており、まさしく彫刻作品といった雰囲気です。
一方でシンプルゆえに柔らかな髪の毛の表現は本作においても健在であり、やはりこれも現在の他の作者の作品では見られない特徴として見所のひとつとなっております。
トゥルコ作全体的に言える特徴として、鑑賞する側にある程度の練度が要るというのものがありますが、本作に関してはメリハリがよく効いており分かりやすい部類にあると感じられ、トゥルコ作の最初の一枚としていいように思います。

貝はコーヒー色の地にくっきりとした白色の層の良質なもの。
白色層の厚さもさることながら褐色層の厚みも十分にあり、かなりしっかりとした印象をうける材です。
ヘアラインは裏10時位置から12時位置にかけて3筋が下に向けて走るものの、褐色層も厚いこともあって表からでは強い光に透かさなければ視認できないものです。