縦：約64mm（カメオ50mm）
横：約54mm（カメオ40mm）
作者：－（アンティーク）
QR：ミュージアムクオリティ

19世紀の一番人気、マイナス（バッカンテ）のカメオの名作の入荷です。

サウリーニ工房の作品を中心に、19世紀において最も人気のあったモチーフであるバッカンテ。
今回のお品物は、間違いなく19世紀の名品でありながら、サウリーニ工房とはまったく別口の珍しい作品です。
19世紀のギリシャ神をモチーフとした作品の名品となると、サウリーニ工房製でなくとも同工房のデザインを踏襲したものが多くみられるところですが、今回は彫刻色の強いサウリーニ工房のものとは異なり、微妙な色使いも感じられます。
髪の彫り方なども大きく異なり、過去に当ギャラリーで取り扱った中では"峻厳なるヘーラー"が近いでしょうか。
かの作品も当ギャラリーに展示するだけあって彫りは上々、ヒビがなくしっかりしたフレームがついていたなら3倍は時価を付けた作品でしたが、今回はあちらよりもさらに大判で彫りが繊細な名品です。
非常に細かくカールした髪の毛は、ウェーブを基本としたサウリーニ工房の様式と全く異なる印象をもたせ、背景に溶け込んでいくような幽玄さを感じさせる色合いも独特のもの。
色使いに着目しているためか全体的に彫りを低くとっていて、一見した感じ陰影のメリハリこそサウリーニ工房の作品に譲りますが、一方でキトンの薄布の表現や要所の深い彫り込み、それに美しく整った顔立ちは紛れもなく超一流の仕事です。
バッカンテの特徴となる葡萄は伝統的なアンティノウス型で、先述の素晴らしい彫刻刀使いによって信じがたい細かさで表現された、木苺を思わせるような葉や実も実に見事。
年に数える程度しか出てこない品質の作品であることに加えて様式としても珍しく、同系統の名品は今年はまだ本作のみ、去年も同じ作者に間違いない女性像の絶品(ただしバッカンテなど特定のモチーフではなかった)を1枚だけ見かけたというくらいの品で、次はいつ入荷できるか全くわからない希少性・芸術性ともにひときわ優れた逸品です。

貝はコーヒー色に磁器のような透明感のある白色が美しい上質のサードニクス。
状態も極めて良好で、ヘアラインは12時位置と1時位置に小さなものがあるのみで、表面はわずかにナレがあるものの、150年程前の作品であることを考えればほぼ無欠点といえます。
裏にうっすらとサインが入っていて、現在19世紀のカメオ彫刻家についての情報が不足していて特定できませんが、これが特定できるようになれば（まず超一流であることは間違いようがないので）時価にも大きく影響が出てくるでしょう。

フレームは当時物で15ctの金無垢製。
ご覧の通りこちらも非常に豪勢で、19世紀のフレームでは珍しい幅広の金板にメアンダーが輝く、非常に目を引く造りとなっております。
キャッチはC型クラスプながらカッチリとピンが留まり、実用に際してもシリコンキャッチなどを併用せずとも問題なさそうな感じです。
落下防止用のチェーンをつけるカンも生きておりますので、こちらにチェーンとピンを装備すれば、現代においても当時の様式のままに身を飾ってくれるでしょう。
カメオを固定している4点のうち、下の1点のみロウ付けがはずれているので、わずかにカメオにカタ付きがあるものの、カメオが外れるような心配はなく、フレーム表面のゆがみもほとんどないという、こちらもカメオ同様に経年を感じさせない状態を保っております。