縦：約55mm（カメオ50mm）
横：約46mm（カメオ41mm）
作者：アゴスティーノ・チェントベッリ
QR：アーティスティッククオリティ

次世代を担う巨匠候補の筆頭、アゴスことアゴスティーノ・チェントベッリ氏の素晴らしい作品の入荷です。

現在名匠として名を馳せる作家たちが多く生まれた1970年代前半、その世代の中でも最も彫刻刀の扱いが上手く、絵画的技術も高度であると評判の高いのがアゴスティーノ・チェントベッリ氏です。
同世代でアゴス氏と同様に極めて高い評価を集めるチーロ・マッツァ氏もそうであるように優秀な彫刻家であるアゴス氏もトッレ・デル・グレコの芸術学校の彫刻の教員を務め、高い評判に反して近年はなかなか作品を手に入れることが難しくなってきております。
また、販売用の作品の制作にかぎらない芸術的活動にも熱心で、サンゴや大理石といったシェルカメオ以外の彫刻も手掛け、さらに特筆すべき点としては、ドイツからメノウを取り寄せてストーンカメオにも挑戦しているなど、今後も芸術家としてさらなる活躍が期待されています。
シェルカメオとハードストーンカメオを両方作るということに関しては、19世紀の巨匠サウリーニでそういう話を聞く程度で、以降イタリアではメノウを彫刻する技術は失伝していますので、アゴス氏の活動によっては150年来のイタリアのストーンカメオの復活、その先駆けともなるかというところで、私としても動向が非常に気になる一番の作家です。

今回のお品物はそのアゴス氏の誕生日の記念がてら買い付けた新品のカメオです。

モチーフはローマ神話における”プロセルピナの掠奪”。
ギリシャ神話においてはペルセポネーの名で知られ、両親は神々の王ゼウスと地母神デメテルとされております。
神々の中でも非常に強力な二人の間に生まれた春の女神ペルセポネーはある日冥界の王ハデスに見初められ、冥界へと連れ去られて1年の半分を冥界で過ごす冥府の女王となりました。
今回の作品はその誘拐のシーンを描いたジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作の彫刻作品”プロセルピナの掠奪”（ローマ・ボルゲーゼ美術館蔵）から、プロセルピナの腰に回されたハデスの腕の部分を抜き出して描いたもので、アゴス氏の元の彫刻作品から絵画的構図として切り出す技能と、それを貝への彫刻で表現する彫刻技能が光る名品です。
元の彫刻でも大理石とは思えない肌の質感がときおり話題となりますが、本作もプロセルピナの脚とそれに食い込むハデスの力強い腕が闇の奥から伸びたような表現が見事であり、女神を無理やりに連れ去る冥王の存在を2本の腕のみで素晴らしく描き出しております。

貝は濃いめのコーヒー色に中間色をもち上層に美しい白色を乗せた上質なサードニクス。
褐色部にはヘアライン等みられないものの、惜しくも白色部にヘアラインが入ってしまっております。
白色部に傷がある場合は目立たないものであっても価格に反映するという当ギャラリーのルールにのっとり、本作も1割ほど価格を引いたものとしております。

フレームは当ギャラリーにて制作した銀製のフレーム。
19世紀の様式をモデルとして現代のものと同様の機能を持たせたもので、ブローチ金具は鉄砲式に、着用時カメオが下を向くことを防止する金具を備えております。
ペンダント用としてはＤカン式と同様に扱っていただけ、こちらも現代のフレームに一般的な両用可能なものとしました。
フレームの銀はハンマーでたたいたものを使って完全に磨き上げずに荒さを残し、また周囲には太目の4面カットチェーンを巻いてプロセルピナを捕らえる荒々しいハデスの様子を表現しております。