縦：約61mm（カメオ47mm）
横：約50mm（カメオ37mm）
作者：アンティーク（サウリーニ工房作）
QR：ミュージアムクオリティ

珍しいポーランドからの入荷、コンクシェルの最高峰となるフローラ像のカメオです。

19世紀中頃から後半にかけて好まれた神話系のカメオとしてはバッカスの巫女たるバッカンテ像のものがよく知られ名品も多いですが、数は少ないもののフローラも良いものが見つかります。
バッカンテ同様に凹凸が多く目を引く構図であると同時にバッカンテ以上に装飾が複雑なフローラ像のカメオの中には、ただ単一種の花を飾るのみでなく複数種の花や果物、穀物を飾るものも見られ、まさに職人のセンスや技術をはじめとした総力を注ぎ込んで作られる最も難度の高いモチーフといえるでしょう。

今回のお品物はフローラ像の中でも稀にみる絶品中の絶品、コンクシェルの三層彫りのフローラ像のカメオです。
コンクシェルの特徴となるその色合いと厚みを十分に活かした本作は、貝の薄いサードニクスやコルネリアンには出来ない高彫りを実現し、厚みに制限のないラーヴァにはできない色層の差を使った表現を実現した、まさにコンクシェルだからこそできるカメオ。
しかもそのピンクとクリーム色がかった白色のコントラストで表現されるのは、無数に存在するカメオのモチーフの中でも最もその色合いと相性がいいフローラ像です。
逆に、フローラ像のカメオで最高のものを作ろうと思えば、おそらくコンクシェル以外には考えられないのではないでしょうか。
彫りもアンティークカメオはもちろんカメオ全体から見ても最高峰であり、これはおそらく過去にミュージアムクオリティとして展示したサードニクスのフローラ像”花々の女神”と同じ作者の作品ではないかと思われ、顔つきや髪、花々の表現など似通った部分が見られます。
もちろん本作の彫りも”花々の女神”に劣らず、考え得る限りの最高の品質で仕上げられた逸品です。
非常に厚みのあるカメオですので言葉で表現するのも難しく、今回も説明するより見ていただいた方がいいと思い、画像を多くご用意しております。
純粋な彫刻における品質としては1年ほど前に展示しました”酒神の巫女”以来の逸品です。
他にも見たい角度などございましたら写真の追加を行いますので、ぜひ愛好家の方々にお楽しみいただければと思います。

貝は厚みのある色乗りの良いコンクシェル。
総じて極めて状態のいいカメオでほぼ完品と言ってよく、まず背景部に淡い色のついたヘアラインが見られるも像までは達しておりません。
つぎに写真で見える顔の表面の荒れのようなものは貝の色の変わり目に生じる層の光の透過具合の差異によるもので、彫りはなめらかです。
髪や下部をとりまく葡萄のリースにみえる縦縞も同じく貝の材質による見え方の違い、画面7時位置にあるフローラの肩口の褐色のものは桃色の層と白色層の中間にでるもので汚れではありません。
背面の黒点も貝の内包物によるもの、これほどに高く精密に彫られた表面もこの150年以上の保存中についたと思われる欠点は一つもない、その品質とも相まってまさに奇跡的ともいえる逸品です。

フレームは9ctゴールド製。
こちらはオリジナルか後年に作り替えられたものか判断が難しいところですが、技法的にはヴィクトリアン独特のレポゼ細工（板金の打ち出し成型加工）によるもので、こちらもアンティークには間違いがありません。
中が空洞になっているため多少へこみが見られものの、破れなどはなく十分着用・鑑賞に供することができます。
留め具はC型クラスプでピンもしっかり留まります。
フレームそのものは1800年代中頃のオリジナルだとしたらこのあたりの補助金具が後から付け足されたものとみられ、他にもペンダント用金具と下向き防止金具が取り付けられております。

※19世紀の巨匠サウリーニの作の可能性があったため一時調査しておりました件につきまして、専門書を取り寄せて掲載されている情報や写真と比較し検討した結果、サウリーニ工房による作品には違いないと思われるが、サウリーニ自身の作ではない（サウリーニ自身の作であるという確証が持てない）という判断をいたしました。