縦：約63mm（カメオ59mm）
横：約47mm（カメオ43mm）
作者：ジェンナーロ・ガロファロ
QR：アーティスティッククオリティ

世界に名高い超一流のシェルカメオ職人、ジェンナーロ・ガロファロ作のカメオです。

ガロファロ氏はモダンカメオを語る上で決して外せない存在です。
ただ、その何が優れているのかというとドレープの柔らかな布の質感が…などと語られるのを見かけるのですが、私はそうではないと見ております。

確かに近年の作品はそういった細部も素晴らしいですが、そもそもそうした彫刻的表現にかけては古くから存在したアンティークのカメオも極めて優れており、一方で若年期のガロファロ氏の作品の細部はそこまで出来が良いとは言えず、したがってわずか16歳でカメオコンクールを制して24歳で最高のカメオ職人の一人とまで言われたのは、そんな些事ゆえではありえません。

アンティークカメオとモダンカメオの違いはなにも時代だけではなく、アンティークはあくまでも彫刻的表現が追求されるのに対してモダンは彫刻と絵画の中間的な表現がなされるところにあり、若いガロファロ氏の作品が絶賛されたのは彫刻と絵画の両立を高いレベルで表現してモダンカメオという新しい分野を切り拓いたからにほかならないのです。

本作はジェンナーロ・ガロファロ氏の作品のなかでも珍しい、日本国内に出回るより前の作品です。

年代についてはフレームにあるバーミンガム・アッセイオフィスのデイトレターから特定でき、少なくともフレームの検品が1970年～71年であることは間違いないがなく、本作はそれと同時期の作品と思われます。

ガロファロ氏の作品としては珍しい絵画風のモチーフで、こうした構図の作品は日本国内でよく見かけるG.G.銘のものでは見かけることがなく、Garofalo銘以降のものでごく稀に見ることがあるくらいです。
若い時期の作品でこうした作例があるというのは私自身今回初めて見ましたし、サインの筆跡も国内で見かけるものとは違いますが、この年代においてG.Gのイニシャルを持つカメオ作者はジェンナーロ・ガロファロ氏以外にデータがないことや70年といういまから50年前の作品にもかかわらずモダンカメオとしてひとつの完成した作品であること、また雲の描き方には同氏の後年の肖像画風のプロフィールの背景においてよく見られるものと同じ特徴があり、さらに水面の描写は国内でよくみられる年代のものでは白色を残さないよう彫りぬくのが典型的ですが、80年頃の作品とみられる比較的古いものでは本作と同じ彫り方をしているものがあることなどを考慮すれば、本作がジェンナーロ・ガロファロ氏の作品であるとして間違いありません。

価値を判断するにあたってはその時期のジェンナーロ氏の評価を考慮する必要がありますが、同氏が最高のカメオ職人の一人とされブリーノ・ドーロを授かったのは24歳、41年の生まれですからこのとき1965年前後であり、本作の製作年当時すでに高い評価を得るだけの作品を作っていたことがわかっております。

貝の質はコーヒー色の地に美しい白色の乗った上質なもので、状態は極めて良好、画面上部にごくごく薄いヘアライン数筋（光に透かしてもカメオをかなり見慣れていなければまず気づかないレベル）があるくらいです。

フレームはイギリス製の9ctゴールド、先述の通りバーミンガムにおけるホールマークが確認できます。
ピンに曲がりがありますが、そもそもまっすぐではキャッチに入らない角度についているので、いたみではなく半ば仕様のような曲がりです。

大きさも殆どが50mmから55mm規格のガロファロ作としては珍しい60mm近い大判です。
モチーフ、大きさ、状態とすべてよくそろった作品であることのみならず、フレームも年代が保証されるホールマーク入りと資料的価値を高めるもので大変珍しいコレクション向きな一品となっております。