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ジョヴァンニ・ノト作 カメオ・アビエ”微笑むプシュケー”
縦:約35mm(カメオ29mm)
横:約23mm(カメオ21mm)
作者:ジョヴァンニ・ノト
QR:アーティスティッククオリティ
作者についてのご紹介は、当ギャラリーのメニューよりBLOGをご覧いただき、記事の"作家01.ジョヴァンニ・ノト"をご覧ください。
今回のお品物は買い付け自体はかなり前だったものの、ノト作という確証がなかったために公開を控えていたものでしたが、最近間違いないという資料が得られたため、ついに公開することとなりました。
本作はノト氏30歳前後の時期の作、この若い頃にのみ見られるカメオ・アビエです。
20世紀に入ってからは1930年頃に流行した、シェルカメオに銀とダイヤなどで装飾を加えるカメオ・アビエ。
日本ではめったに見かけることのないカメオですが、実はこの頃の品物であればアメリカの市場には大量に現存しており、カメオ・アビエそのものは探すのは難しいことではありません。
ただし、それは品質を問わなければの話で、20世紀半ばはシェルカメオもストーンカメオも明らかに品質が落ちる時代※であり、この当時のカメオで質が高いものは非常に稀となります。
※おそらく欧州に甚大な消耗をもたらした第1次世界大戦及び世界恐慌の影響で20世紀前半を通して工芸職人が育つ環境ではなかったものと思われる。
事実20世紀前半の芸術面における文化というと、それを担ったのは19世紀末に生まれた芸術家たちの手により1920年頃までに展開されたものが多く、30年頃からしばらくは文化的な衰退期である。
この時代にだけカメオ・アビエが復活したというのは偶然などではなく、1900年以前よりはるかに落ちたカメオの品質を少しでも補うための苦肉の策であったものと思われる。
本作のカメオの品質はそんな文化の暗黒時代にあって異例といっていもいい出来の良さで、さすがにノト作といったところでしょうか。
ノト作としてはあまり見る機会が無い時期のものなのですが、数少ない現存品においてよく見られるこの当時のノト氏の典型的な作風で、整った顔立ちに歯を見せた笑み、彫り込みの深い髪と丁寧に散らされた髪先が目を引きます。
この歯を見せた笑みは後年までノト氏が描き続けたノト作の特徴でもあり、他作者の作品と一線を画する(圧倒すると言ってもいい)表情の豊かさを表現するもののひとつです。
この上下の唇の間に空いた口は0.5mmほどしかないにもかかわらず、肉眼で見て分かるほどしっかりと歯が彫りいれられているのは驚くべきことで、こんなことができる職人は現在に至るまでみてもそういるものではないでしょう。
頬にかかった髪や肩に飾られた花も後年まで見られるもので、当ギャラリーに展示されている他のノト作でも同じような表現のものがあるのが分かると思います。
貝は黄色部にもほんのり橙色が上に乗ったコルネリアン。
状態も良好、古いコルネリアン特有の0時方向に出るヘアラインのほか、裏面1時から2時にかけてヘアラインが1筋ありますが、表から高く彫り上げられたプシュケーの蝶の羽飾りに隠れてほとんど見えません。
もちろんダイヤも健在、銀のモールはさすがに硫化してはいるものの切れは見られません。
フレームは14ctゴールド製。
様式はこの時期良く見られるもので、幾何学的な模様の金線細工はまさしくこのアールデコの時代を象徴するもの。
フレーム自体も当時の美観を反映したもので、シンプルな現在のものとくらべ高い装飾性を持っていますが、カメオが十分に美しい出来だけに程よい引き立て役となっております。
状態も良く、わずかに歪みがあるのみで大きな破損はない綺麗なフレームです。
ノト作でも初期のもののため後年のものと比べるとまだ彫りに粗さが目立ち、一部でノト作であることに疑問を呈する声もありますが(70年代の作品と比べて作風の違いや質の差を根拠とする主張で、年代の違いを考慮していない意見である)、当ギャラリーにおいては同時代のカメオを数多く見て1930年当時のノト氏の作風を確認しており本作がノト作であると確信を得るに至っております。
とはいえ、やはり後年作とおなじ価格帯で扱うわけにはいかず、また大きさも小さいので、ノト作としてはかなりお安めとなってります。
横:約23mm(カメオ21mm)
作者:ジョヴァンニ・ノト
QR:アーティスティッククオリティ
作者についてのご紹介は、当ギャラリーのメニューよりBLOGをご覧いただき、記事の"作家01.ジョヴァンニ・ノト"をご覧ください。
今回のお品物は買い付け自体はかなり前だったものの、ノト作という確証がなかったために公開を控えていたものでしたが、最近間違いないという資料が得られたため、ついに公開することとなりました。
本作はノト氏30歳前後の時期の作、この若い頃にのみ見られるカメオ・アビエです。
20世紀に入ってからは1930年頃に流行した、シェルカメオに銀とダイヤなどで装飾を加えるカメオ・アビエ。
日本ではめったに見かけることのないカメオですが、実はこの頃の品物であればアメリカの市場には大量に現存しており、カメオ・アビエそのものは探すのは難しいことではありません。
ただし、それは品質を問わなければの話で、20世紀半ばはシェルカメオもストーンカメオも明らかに品質が落ちる時代※であり、この当時のカメオで質が高いものは非常に稀となります。
※おそらく欧州に甚大な消耗をもたらした第1次世界大戦及び世界恐慌の影響で20世紀前半を通して工芸職人が育つ環境ではなかったものと思われる。
事実20世紀前半の芸術面における文化というと、それを担ったのは19世紀末に生まれた芸術家たちの手により1920年頃までに展開されたものが多く、30年頃からしばらくは文化的な衰退期である。
この時代にだけカメオ・アビエが復活したというのは偶然などではなく、1900年以前よりはるかに落ちたカメオの品質を少しでも補うための苦肉の策であったものと思われる。
本作のカメオの品質はそんな文化の暗黒時代にあって異例といっていもいい出来の良さで、さすがにノト作といったところでしょうか。
ノト作としてはあまり見る機会が無い時期のものなのですが、数少ない現存品においてよく見られるこの当時のノト氏の典型的な作風で、整った顔立ちに歯を見せた笑み、彫り込みの深い髪と丁寧に散らされた髪先が目を引きます。
この歯を見せた笑みは後年までノト氏が描き続けたノト作の特徴でもあり、他作者の作品と一線を画する(圧倒すると言ってもいい)表情の豊かさを表現するもののひとつです。
この上下の唇の間に空いた口は0.5mmほどしかないにもかかわらず、肉眼で見て分かるほどしっかりと歯が彫りいれられているのは驚くべきことで、こんなことができる職人は現在に至るまでみてもそういるものではないでしょう。
頬にかかった髪や肩に飾られた花も後年まで見られるもので、当ギャラリーに展示されている他のノト作でも同じような表現のものがあるのが分かると思います。
貝は黄色部にもほんのり橙色が上に乗ったコルネリアン。
状態も良好、古いコルネリアン特有の0時方向に出るヘアラインのほか、裏面1時から2時にかけてヘアラインが1筋ありますが、表から高く彫り上げられたプシュケーの蝶の羽飾りに隠れてほとんど見えません。
もちろんダイヤも健在、銀のモールはさすがに硫化してはいるものの切れは見られません。
フレームは14ctゴールド製。
様式はこの時期良く見られるもので、幾何学的な模様の金線細工はまさしくこのアールデコの時代を象徴するもの。
フレーム自体も当時の美観を反映したもので、シンプルな現在のものとくらべ高い装飾性を持っていますが、カメオが十分に美しい出来だけに程よい引き立て役となっております。
状態も良く、わずかに歪みがあるのみで大きな破損はない綺麗なフレームです。
ノト作でも初期のもののため後年のものと比べるとまだ彫りに粗さが目立ち、一部でノト作であることに疑問を呈する声もありますが(70年代の作品と比べて作風の違いや質の差を根拠とする主張で、年代の違いを考慮していない意見である)、当ギャラリーにおいては同時代のカメオを数多く見て1930年当時のノト氏の作風を確認しており本作がノト作であると確信を得るに至っております。
とはいえ、やはり後年作とおなじ価格帯で扱うわけにはいかず、また大きさも小さいので、ノト作としてはかなりお安めとなってります。