縦：約61mm（カメオ53mm）
横：約50mm（カメオ43mm）
作者：－（アンティーク）
QR：エクストラクオリティ＋

アメリカより到着しました、ヴィクトリア朝における人気のバッカンテのカメオの入荷です。

日本のカメオの歴史は浅く、1980年代ごろからの流通となっており、それより古いものはあまり見かける機会がありません。
たまに見かけるものも質がいいとは言えないものが大半を占め、アンティークカメオが豊富に残る海外市場においてでもただ古いだけ、またフレームがそれなりの出来でもカメオそのものが二流三流というものが多く、カメオそのものが素晴らしいものはやはり高値で取引されております。

今回のお品物はヴィクトリア朝中期から高い人気をもつバッカンテ、さらにその中でも評価の高い三層彫りのカメオです。

19世紀後半より現代にいたるまで非常に人気の高いモチーフとして知られるバッカンテ。
その目を引く装飾や美しい造形は職人の腕の見せ所であり、彫るのが難しいモチーフゆえに極端に出来の悪いものも少なく、取り扱うカメオのクオリティに一定の制限を設けている当ギャラリーにおきましても数多く取り扱ってまいりました。
今回はヴィクトリアンジュエリーの中でも特徴的な黒玉のフレームに収められたサードニクス三層彫りのバッカンテのカメオ。
三層彫りという言葉自体は比較的目にする機会も多いものの、本当に三層彫りといえるものは少なく稀少です。
もちろん今回のカメオは頭を飾る葡萄の葉に色を乗せるよう作られている正真正銘の三層彫り。
三層彫りの素材としてはかなり薄い素材の貝であり、これを三層に分けてバッカンテを彫り込むのは大変な技術が要ると思われます。
葡萄の葉は広く、葉脈も細かに彫られており、葡萄の実も一粒一粒丁寧に描かれ、とくに最も右上の房は色の乗った層と白色層の2つに分けて彫られていて、作者の高い技術を明確に表しております。
カメオとして重要な顔立ちももちろん美しく、通った鼻筋からなめらかな顎までのラインと褐色の背景とのコントラストが映えます。
顔のバランスでは一般的なカメオの顔に比べて目が小さく、美しくも独特の雰囲気をもった顔つきです。
そのほか、キトンのひだや髪の繊細なラインなどもきれいに仕上げられ、また大きさが2インチ（約50mm）を超えるというアンティークとしては大判となるカメオで、大判かつ三層彫りで彫りのレベルが高いという、アンティークの中でも数が少ない逸品となっております。

貝はカフェオレ色の地にくっきりとした白色、そして黒褐色と淡褐色の縞模様の上層が乗ったサードニクス。
背面の色には色斑があり、カフェオレ色からミルクティー色のグラデーションがあるものの、色が濃い部分に顔の輪郭を持ってくるというセオリーをしっかり守っており、強いコントラストを印象付けさせております。
後述の通りフレームから外すことができず、フレームが光を通さないため検品が難しいところですが、ヘアラインは1時半の位置に1筋確認できるのみ、その他ごく小さなチップやスレがみられます。

フレームは今回の作品については少々特殊、まず素材は黒玉。
黒玉とはこのヴィクトリア朝喪服時代に流行した、半炭化した木を素材としたものです。
同時代には同じく黒色のものでもセルロイドやブルカナイト（硫黄を添加し硬化させたゴム、一般にはエボナイトと呼ばれる）がありますが、ブルカナイトよりも軽く、欠け方にセルロイドのような粘りが感じられないため黒玉製とみます。
側面にはメアンダーが彫られ、背面には貫通した2点の孔があります。
購入元によると元々はバックルであったとの話ですが、現在は金具がなく、現状ではアクセサリーとしての使用ができない状態となっております。
また、カメオは接着剤のようなものでフレームに固着されており、外すことはできません。

カメオの品質でいえば先述の通り大きさ、彫り、色使いともに素晴らしいのですが、フレームの品質がさほどでない上に取り外しが効かないということで、やや抑えめの価格となっております。
アクセサリーとしてご使用を希望される方は、仕様等ご相談の上制作を承りたく思いますので、ご購入のお手続き前にお問い合わせよりご連絡くださいますようお願いいたします。