縦：約63mm
横：約51mm
作者：フランコ・スカーラ
QR：アーティスティッククオリティ

イタリアカメオ界の名匠のひとり、フランコ・スカーラ作のカメオの入荷です。

フランコ・スカーラ氏は独特の哀愁を持つ作風で有名な作家ですが、そう言われる一方でこれといった”型”が無いという稀有な作家でもあります。
通常カメオの制作は職人に対し、作家ごとの特徴を汲んだ上で需要に沿ったものを作ってもらうという世界であり、名匠・巨匠と呼ばれる作家には大抵なにかしらの代名詞的な優れた具体的な作風があるものですが、スカーラ氏にはそれがありません。
それゆえ若干”わかりにくい作家”であり、また後述の理由※もありあまり一般受けはしない感じがあります。
しかしながら型や需要にすら捕らわれず、自分の作りたいものを作ってそれでも名を挙げるという経歴はまさに芸術家と言うにふさわしく、また同時代の巨匠・名匠と呼ばれる作者に比べると、同氏の影響を受けた後代の作者は類縁者にとどまらず圧倒的に広く多いことからみても、むしろ玄人受けする非常に高い芸術性と表現力を持っていることは明らかです。
購入する側を見ても、カメオをブランド物やただのジュエリーではなく美術品として捉えるコレクターからは、極めて強い支持を集めております。

※フランコ・スカーラ氏はいわば大器晩成型の作家であり、風景物は90年代中頃より、人物物がよくなるのはもっと後で2000年頃以降。
カルロ・パルラーティ氏やジェンナーロ・ガロファロ氏のように若くしての受賞や教皇庁への献上などの話も聞かないこと、さらに代名詞的な作品が無いこともあってブランド力において評価が落ちる結果となっている。
本作はスカーラ氏の得意とする風景彫りのカメオブローチです。

珍しい三角形の貝に彫られた本作はスカーラ氏が良く彫った石畳のある村の風景。
水が噴き出る柱状の泉は、スカーラ氏の弟子にして自身も名匠として知られるフランチェスコ・モナステーロ氏が好んで描くオブジェクトで、師弟のつながりが見えるところもカメオ愛好家としては面白く見どころとなるのではないでしょうか。
モナステーロ氏の風景彫りと比べると遠景の描き方に違いがよくみられ、比較的近代的かつ画一的な雰囲気のあるモナステーロ氏の作品に対してより古く、ややさびれたようなオブジェクトを絶妙な色の濃淡の扱いにより空気遠近感を出して描いており、スカーラ作特有の寂寥感を感じさせてくれます。
また、ふたりの女性は画面の外に目を向け、待ち人が現れたその瞬間を切り取ったようにみられ、ただ日常風景を描いたのではなく、そこから先につながる出来事なども想像できる構図も独特で、このあたりはカメオのほか絵に対する造形も深いスカーラ氏らしい物語性のある構図といいましょうか、ほかのカメオ作者と一線を画すモダンカメオの巨匠たるゆえんでもありましょう。

貝はコーヒー色の地色に、スカーラ氏の風景カメオに向いた中間層を挟んで白色の乗ったもの。
上体は極めてよく、光に透かしても見つけにくいほどに薄いヘアラインが2筋見られる程度です。

フレームはK18製。
不規則な形状のカメオですが、バチカンは立てたときにちゃんとまっすぐなるようにつけられており、カメオが下向きにならないように付けられた金具もありしっかり作られております。