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2022/01/04 00:13
今回はカメオの素材になる貝についての記事です。
カメオの素材になることで知られているのは大きく4種。
最もよく見るのはマンボウガイ、それにクチグロトウカムリ、さらにピンクガイ、ホシダカラと続く形となります。
ここまではカメオの書籍などにも載っていることなのですが、より深く理解するために、実際に自分で貝を取りよせて切り分けてみた時に得た情報をまじえつつ本には載っていないことを記事にしていきたいと思います。
もともと1本の記事でまとめようと思っていたのですが、いざ書き始めてみるとあまりにも長くなったので(マンボウガイあんまり書くことないなと思って書き始めましたが、気づいたら原稿用紙10枚超えていた…)貝の種類ごとに、4回に分けて記事にしていきます。
まず第1回は最もカメオシェルとしてみることが多いマンボウガイから。
もともと1本の記事でまとめようと思っていたのですが、いざ書き始めてみるとあまりにも長くなったので(マンボウガイあんまり書くことないなと思って書き始めましたが、気づいたら原稿用紙10枚超えていた…)貝の種類ごとに、4回に分けて記事にしていきます。
まず第1回は最もカメオシェルとしてみることが多いマンボウガイから。
マンボウガイ、大型の巻貝であるトウカムリ科に属する貝で、最大で殻長17㎝程になる貝です。
学名はCypraecassis rufaとなっており、近年までクチグロトウカムリと同属のCassis属に分類されていたことから、今でもCassis rufaで記載されていることも多いです。カメオの貝としてはコルネリアンと呼ばれ、一般的には安物のカメオ用の貝という誤解が広がっている貝ですね。ちなみにマンボウガイは万宝貝と書き、魚のマンボウとは関係ありません。
生息地は広く、熱帯太平洋からインド洋まで広がり、日本にも南西諸島近海に生息しているので、沖縄や奄美のおみやげ物で貝を扱っているところにおいてあったりします。
カメオ用の素材として古くから東アフリカから運ばれて使われてきたとされ、20世紀前半の欧州混乱の時代には中米産で海路輸送が必要だったサルドニクスのカメオがほとんど見られなくなったのに対して、漁獲さえできればほとんど陸路で運べて距離も比較的近かった本種はカメオの素材として使われ続けてきました。
大きさは基本的には大きくて6インチ(約15㎝)ほどでそれより大きいものは稀であり、サルドニクスと言われるクチグロトウカムリ類に比べると小型になります。日本にも分布していることもあり、この種自体はクチグロトウカムリに比べるとかなり手に入れやすい貝ではありますが、北限の日本産は小さめで13㎝前後のものが多く、15㎝を超える個体はあまり見かけない印象です。ちなみに日本産に多い13㎝くらいだと、今まで私が切ってみた感じだと基本的に薄すぎてカメオの素材にするのは厳しい感じがしました。15㎝でもある程度厚みのある個体を選ぶ必要を感じるほどで、分布が広く個体数も多くて手に入りやすい種とはいえ使える貝はさほど多くはないというのが実情のようです。
カメオ用の素材として古くから東アフリカから運ばれて使われてきたとされ、20世紀前半の欧州混乱の時代には中米産で海路輸送が必要だったサルドニクスのカメオがほとんど見られなくなったのに対して、漁獲さえできればほとんど陸路で運べて距離も比較的近かった本種はカメオの素材として使われ続けてきました。
大きさは基本的には大きくて6インチ(約15㎝)ほどでそれより大きいものは稀であり、サルドニクスと言われるクチグロトウカムリ類に比べると小型になります。日本にも分布していることもあり、この種自体はクチグロトウカムリに比べるとかなり手に入れやすい貝ではありますが、北限の日本産は小さめで13㎝前後のものが多く、15㎝を超える個体はあまり見かけない印象です。ちなみに日本産に多い13㎝くらいだと、今まで私が切ってみた感じだと基本的に薄すぎてカメオの素材にするのは厳しい感じがしました。15㎝でもある程度厚みのある個体を選ぶ必要を感じるほどで、分布が広く個体数も多くて手に入りやすい種とはいえ使える貝はさほど多くはないというのが実情のようです。

※左が国産13㎝、右が東インド洋産17㎝。数字で見るより大きさの違いがはっきり判ります。
それでは次は実際に貝を切って、中を見てみましょう。
カメオに加工する際はホシダカラ以外は切り方は大体同じで、殻口から1周、ぐるっと渦巻にそって切り離し、外唇部との境目で縦に切りこみを入れて、最後に下を切って分けます。カメオに使えるのは外周の1周のみ、とはいえ外唇部は除かなければならないので、外周で実際に使えるのは6割ほどしかありません。外唇部はいったん除くものの、これは三層彫のカメオの素材として使えるので、残った部分はとっておきます。
さて、とりあえず外周を切り分けたものの裏を見てみますと、一つの殻でも内部は場所によりかなり色に違いがあるのがお分かりいただけるでしょう。私がコルネリアンのカメオの貝の状態を示す項にて、よく”コルネリアンの殻口付近”とか”1つの貝から1枚しか取れない色の濃い部位”と書いているのはこういうことです。だいたい毎回書いているので当り前のようにも感じてしまいますが、実は一流のコルネリアンのカメオでは当り前にみられる朱色や濃い橙色を背景色にもつ母材は貝の口付近でしかとれず、さらにこの口の上部は大きなこぶがあり、下すぎれば湾曲がきつすぎてカメオにするのが難しいため、カメオに使えるのは口付近の下の湾曲がゆるい部分のみになります。こうなると、ひとつの貝から1枚しか取れないわけです。

※貝をカメオ材に加工する第1段階、外周部を本体から切り離します。ご覧の通り色が濃いのは口の方だけ。
ちなみにこの色のグラデーションはカメオのデザインにも影響を与えております。下の写真は50mmや35mmの規格サイズの型紙を当ててマーキングしたものですが、写真では右下が最も色が濃い部分になっています。これを切り出して貝の表を上にすると、色の濃い部分は左右に反転して左下か、さらに180度回転させて右上かになりますね。カメオは像と背景のコントラストが出来の良し悪しの指標の一つとなりますから、優れた彫刻師はなるべく色が濃い部分を効果的に背景に使いたいと考えます。そして人物の場合は、コントラストを最も見せたいのは、大体の構図の場合顔の輪郭です。するともちろん、色の濃い部分が画面の左下に来てしまっては顔の輪郭に当たらないし、そもそも像の肩などで隠れてしまい背景色として表に出ないのでせっかくの貝の色が活かせずもったいない。となると残る選択肢は2つ、さかさまにして右上に濃い部分をもってきて、像を右向きにするか左向きにするかですが、濃い部分は右にあるので左を向く選択肢ははじかれ、白色層の輪郭と橙色のコントラストが映える右向きに彫ろう、となるわけです。

※貝をカメオ材に加工する第1段階、外周部を本体から切り離します。ご覧の通り色が濃いのは口の方だけ。
ちなみにこの色のグラデーションはカメオのデザインにも影響を与えております。下の写真は50mmや35mmの規格サイズの型紙を当ててマーキングしたものですが、写真では右下が最も色が濃い部分になっています。これを切り出して貝の表を上にすると、色の濃い部分は左右に反転して左下か、さらに180度回転させて右上かになりますね。カメオは像と背景のコントラストが出来の良し悪しの指標の一つとなりますから、優れた彫刻師はなるべく色が濃い部分を効果的に背景に使いたいと考えます。そして人物の場合は、コントラストを最も見せたいのは、大体の構図の場合顔の輪郭です。するともちろん、色の濃い部分が画面の左下に来てしまっては顔の輪郭に当たらないし、そもそも像の肩などで隠れてしまい背景色として表に出ないのでせっかくの貝の色が活かせずもったいない。となると残る選択肢は2つ、さかさまにして右上に濃い部分をもってきて、像を右向きにするか左向きにするかですが、濃い部分は右にあるので左を向く選択肢ははじかれ、白色層の輪郭と橙色のコントラストが映える右向きに彫ろう、となるわけです。
ちなみにサルドニクスもコルネリアンほどではないにしろ同じような色のグラデーションを持っているので部材により右向きの像になることが多く、結果としてシェルカメオは右向きが多いということになっています。特にコルネリアンはいま確認されましたように色の制限が強いので右向きが多いですが、例外としてキリスト教に関連したカメオは左向きが多い傾向にあるように感じます。この辺りは後頭部に強いコントラストを持ってくることで後光や光輪をイメージしているものと思われ、実際それらが彫刻であらわされている場合、背景色が薄いと見えにくくなるので色が濃い部位を背景に持ってくる傾向がありますから、直接の描写がないものもキリスト教関連であれば同様の構図取りをする習慣があったのでしょう。
最近あまり聞かなくなったものの、カメオの向きは右がいいのか左がいいのか、いやいや左の方が珍しいから特別で優れているとか、背景色には全く触れずに向きだけでどうのこうのと主張する、根拠がよくわからない意見を昔よく見ましたが、彫刻師たちは考えなしに向きを決めているわけではなくちゃんと構図的合理性があってのことですので、カメオを見る際はそのあたりも気を付けてみると一層よいカメオを見分ける助けになるかと思います。

※切り離した外周部の裏に型紙を当てマーキングして、それに沿って切り分けていきます。切りかけになっているのが最良の部材ですが、もう少し下寄りで色の濃い部分を広くとってよかった…失敗。
次にカメオ用に取れる枚数について書いていきます。
ひとつのマンボウガイからとれるカメオ部材はあまり多くなく、上の写真のマンボウガイはマンボウガイの中でも最大クラスの17㎝台の個体ですが、それでも50mm規格3枚、35mm規格2枚の計5枚です。
ここで最初に除外した外唇部についても触れておきましょう。まず最初に、外唇部からとれるのは基本的に1枚のみです。表からでは2、3枚くらい取れそうにみえるのですが、実際に切って断面を見てみると、成長過程で入り組んで空洞になっていたり層が癒合しきっていなかったり、また色が濃くひだ状になっている部分は薄くなっていたりで、表から見える範囲に比べて実際に使える面積は非常に少ないです。この17㎝クラスの貝であっても50mmを1枚とるのがやっと。55mmは取れませんでした。
ちなみにこの部位は見ての通り内側の色が薄く、半透明の白色であることが多くて色が濃い目についているものは稀です。したがって外唇部を使ったコルネリアンの三層彫では上から橙、白、半透明の白の3色に分かれることが多いですが、まれに内側に色が濃くついているもので上から橙、白、半透明の橙のコントラストに優れたカメオが出ます。この辺りは素材だよりで作者も意のままにというわけにいきませんから、彫の良い作品でこのコントラストを持つカメオを見つけたら、より希少性が高い作品なので優先的に確保するのもいいでしょう。
なおこの部位に関しては外周部と違って内側の色で像の向きが制限されませんから、右向きも左向きも見られます。

※トウカムリ科特有の外唇部。右は上から2番目の写真の右のものを裏返したもの。その広い方を切り分けて本を開くようにひっくり返したものが左のような形となり、使える部分をマーキングして切り出して、ようやくひとつ、真ん中のような三層彫用の部材が作れます。
最近あまり聞かなくなったものの、カメオの向きは右がいいのか左がいいのか、いやいや左の方が珍しいから特別で優れているとか、背景色には全く触れずに向きだけでどうのこうのと主張する、根拠がよくわからない意見を昔よく見ましたが、彫刻師たちは考えなしに向きを決めているわけではなくちゃんと構図的合理性があってのことですので、カメオを見る際はそのあたりも気を付けてみると一層よいカメオを見分ける助けになるかと思います。

※切り離した外周部の裏に型紙を当てマーキングして、それに沿って切り分けていきます。切りかけになっているのが最良の部材ですが、もう少し下寄りで色の濃い部分を広くとってよかった…失敗。
次にカメオ用に取れる枚数について書いていきます。
ひとつのマンボウガイからとれるカメオ部材はあまり多くなく、上の写真のマンボウガイはマンボウガイの中でも最大クラスの17㎝台の個体ですが、それでも50mm規格3枚、35mm規格2枚の計5枚です。
ここで最初に除外した外唇部についても触れておきましょう。まず最初に、外唇部からとれるのは基本的に1枚のみです。表からでは2、3枚くらい取れそうにみえるのですが、実際に切って断面を見てみると、成長過程で入り組んで空洞になっていたり層が癒合しきっていなかったり、また色が濃くひだ状になっている部分は薄くなっていたりで、表から見える範囲に比べて実際に使える面積は非常に少ないです。この17㎝クラスの貝であっても50mmを1枚とるのがやっと。55mmは取れませんでした。
ちなみにこの部位は見ての通り内側の色が薄く、半透明の白色であることが多くて色が濃い目についているものは稀です。したがって外唇部を使ったコルネリアンの三層彫では上から橙、白、半透明の白の3色に分かれることが多いですが、まれに内側に色が濃くついているもので上から橙、白、半透明の橙のコントラストに優れたカメオが出ます。この辺りは素材だよりで作者も意のままにというわけにいきませんから、彫の良い作品でこのコントラストを持つカメオを見つけたら、より希少性が高い作品なので優先的に確保するのもいいでしょう。
なおこの部位に関しては外周部と違って内側の色で像の向きが制限されませんから、右向きも左向きも見られます。

※トウカムリ科特有の外唇部。右は上から2番目の写真の右のものを裏返したもの。その広い方を切り分けて本を開くようにひっくり返したものが左のような形となり、使える部分をマーキングして切り出して、ようやくひとつ、真ん中のような三層彫用の部材が作れます。
話を戻して1つの貝からとれるカメオ素材の数についてですが、総合してみると最大級の個体でもレギュラーサイズを優先して取っていくと1つの貝からとれるのは50mm規格が4枚、35mm規格が2枚。その中で外周部の良材は1枚、扱いが難しい三層彫用の素材が1枚です。
そもそも素材として使える貝が大型の個体に限られることと、それでも1つの個体からとれる枚数は少ない事で察せられるとおり、貝の素材としては一般に誤解されているように安価な素材ではありません。実際、日本でも有名なアニエロ・ペルニーチェ氏もコルネリアンとサルドニクスの素材単価は変わらないと言われています。
コルネリアンが安価なカメオに使われる傾向にあるのは、小さな貝を効率よく、なるべく廃棄が出ないよう高密度で部材取りをする…つまり大きなサイズで切り出すのではなく40mm規格や30mm規格で切り出していくとコストパフォーマンスがいくらか向上しますので、企業としてはそういった取り方を好む結果として、単純に小さなカメオは大きなカメオより安くなるため比較的安価になることがひとつ。一方、サルドニクスはコルネリアンほど色の制限がきつくなく、型も大型で良質かつ大きな部材がたくさん取れること、白色と褐色の構成はコントラストが強く、さらに昔に比べ立体彫刻技術が落ちて表現を貝の色に依存する割合が高くなった現代のカメオに向いていることなどから、現代の高級カメオの素材用としてはサルドニクスの方が都合がよく数的にも供給が足りていて、あえてコルネリアンから高級カメオ用の素材を積極的にとる必要性が薄く、消去法的にお土産用などにコルネリアンがまわされるという事情もあるかもしれません。
ただしギャラリーの作品を見てみると、風景物や絵画物では時代を問わずサルドニクスの方が向いており良品もそちらが多いものの、古い人物カメオでは良質になるほどコルネリアンの割合が増えていくことからわかるように、彫刻の技術が優れていればコルネリアン特有の表現の幅広さが使えるようになり、サルドニクスのカメオを凌ぐ作品が生み出されるようになります。現在はコルネリアンのカメオに安物が多いのは事実の一つではありますが、それはコルネリアンが安いからでもポテンシャルで劣るからでもなく、コルネリアンを使いこなせる作者が少ないからです。カメオを見る際はコルネリアンだから安物と判断するのではなく、むしろコルネリアンの上質なものはコルネリアンでなければ作れない、そしてそれを作るだけの高い技術を持った彫刻師のみが作れるものとして正しい評価ができるよう心掛けたいものです。
そもそも素材として使える貝が大型の個体に限られることと、それでも1つの個体からとれる枚数は少ない事で察せられるとおり、貝の素材としては一般に誤解されているように安価な素材ではありません。実際、日本でも有名なアニエロ・ペルニーチェ氏もコルネリアンとサルドニクスの素材単価は変わらないと言われています。
コルネリアンが安価なカメオに使われる傾向にあるのは、小さな貝を効率よく、なるべく廃棄が出ないよう高密度で部材取りをする…つまり大きなサイズで切り出すのではなく40mm規格や30mm規格で切り出していくとコストパフォーマンスがいくらか向上しますので、企業としてはそういった取り方を好む結果として、単純に小さなカメオは大きなカメオより安くなるため比較的安価になることがひとつ。一方、サルドニクスはコルネリアンほど色の制限がきつくなく、型も大型で良質かつ大きな部材がたくさん取れること、白色と褐色の構成はコントラストが強く、さらに昔に比べ立体彫刻技術が落ちて表現を貝の色に依存する割合が高くなった現代のカメオに向いていることなどから、現代の高級カメオの素材用としてはサルドニクスの方が都合がよく数的にも供給が足りていて、あえてコルネリアンから高級カメオ用の素材を積極的にとる必要性が薄く、消去法的にお土産用などにコルネリアンがまわされるという事情もあるかもしれません。
ただしギャラリーの作品を見てみると、風景物や絵画物では時代を問わずサルドニクスの方が向いており良品もそちらが多いものの、古い人物カメオでは良質になるほどコルネリアンの割合が増えていくことからわかるように、彫刻の技術が優れていればコルネリアン特有の表現の幅広さが使えるようになり、サルドニクスのカメオを凌ぐ作品が生み出されるようになります。現在はコルネリアンのカメオに安物が多いのは事実の一つではありますが、それはコルネリアンが安いからでもポテンシャルで劣るからでもなく、コルネリアンを使いこなせる作者が少ないからです。カメオを見る際はコルネリアンだから安物と判断するのではなく、むしろコルネリアンの上質なものはコルネリアンでなければ作れない、そしてそれを作るだけの高い技術を持った彫刻師のみが作れるものとして正しい評価ができるよう心掛けたいものです。

※7インチ弱(約17㎝)のコルネリアンと8インチ(約20㎝)のサルドニクス。コルネリアンは50mm×3、35mm×2の5枚に対して、サルドニクスは60mm×1、50mm×5、35mm×2(1枚左に隠れています)の8枚。1インチちょっとの違いで見た目にも大きさが全く違うだけでなく、もちろん取れる量もこれだけ変わります。さらにコルネリアンはこれで最大クラスですがサルドニクスで8インチはまだ小型。最大12インチまで成長します。