blog

2021/09/06 18:44



ジェンナーロ・ガロファロ氏、フランコ・スカーラ氏とともにモダンカメオにおいて高く評価される、名実ともに間違いなく現代最高峰の作者の一人、パスクアーレ・オッタヴィアーノ氏。
特徴的な透明感のある彫りと極めて細かな表現力は他の作者と一線を画しており、誰が見ても優れていると分かるものを作るという点においては先の二名の巨匠よりもインパクトのある存在です。
最近は息子のファビオ氏、甥のジーノ氏、また血縁者以外では近年マッシモ・バルツァーノ氏やチーロ・アッカニート氏など若手の名匠たちがどんどん綺麗なレースを彫るようになってきておりますが、やはりこの手の作風の筆頭はパスクアーレ氏でしょう。
しかしながら2020年現在、市場でもめっきり作品を見かける機会が減り、特にレースの透明感が増してくる90年代以降の作品は年に数枚程度しか見なくなってきました。
いまはまだ専門店に在庫が残っているとはいえ、現在すでに新作の発表もなくなっておりますので、在庫がなくなり次第入手することは非常に困難になってくると思われます。

作品の傾向として最大の特徴となるのはレースの彫り、それと同じくらい特徴的なのは画面内の情報の多さ。
共に一目でわかる特徴であり、さらにモチーフ上レース彫りの必要性が感じられない作品にまでもとにかくレース彫りを施す(髭面の男性がなぜか半透明のレース衣装を着ているというようなよくわからない作品もある)ことでオッタヴィアーノ=レース彫りというイメージづくりを行い、その分かりやすさをもって成功した作者といっていいでしょう。
2000年頃においてはこのレース彫りはオッタヴィアーノ氏特有のもので、他の作者の作品では得られなかったものなので、その美しさを求めて買い求める愛好家の方も多く、その希少性から時価も大きく上がりました。
今現在も時価は高めながら、個人的には今後は平均的にいえば時価落ちが懸念されるところかな、とみております。
というのは、かつては独占的であったその作風を後発の作者たちが再現できるようになってきて、先述の通りとにかくレース彫りにこだわったことが裏目に出る形で、そこで並ばれたら優位に立てる点が少なくなるという状態となってきたからですね。
パスクアーレ氏のご子息のファビオ氏はもちろん、マッシモ・バルツァーノ氏やチーロ・アッカニート氏はすでに作品で再現して見せており、技術的にはおそらく中堅どころの腕利きであるアゴス氏やチーロ・マッツァ氏も可能、風景物で色の濃淡を巧みに扱うフェルディナンド・セルペ氏やラファエレ・ヴィティエロ氏も再現できるでしょうし、さらに近年の傾向として立体的な彫刻要素よりも貝の濃淡を駆使した絵画要素の強いカメオが台頭しつつあることを考えれば、他にもやろうと思えばできる作者は複数存在するばかりか、今後もっと増えていくと思われます。
パスクアーレ氏のカメオは遠めに見ると綺麗なのですが近くで見ると粗さが目立つという欠点があり、この点でも後発の作者たちの方がきれいな彫りを見せていること、また風景物においてはオッタヴィアーノ氏の良作はパースの概念がない構図であることが多い一方でパースがある構図はその崩れが見えることが多く、これも絵画の基礎において理解の深いマッツァ氏やセルペ氏と比べると苦しい結果を出すでしょう。
画面内の情報量の多さについても近年の基礎技術の向上により手の込んだ作品を作る作者は多くなり、アントニオ・グアラチーノ氏やフランチェスコ・モナステーロ氏などがよく詰んだ画面の作品を発表しております。

総じていえばやはり他の巨匠と呼ばれる作者においての事情と同様、後発の優れた作者たちが登場してきたことで名前だけで評価がされる時代は終わり、近年の名匠たちの作品にも劣らない作品こそを特に評価すべき時代が到来したという状況です。
とりあえずオッタヴィアーノブランドは高価という時代が終わることで相対的に評価は落ち着くものの、やはりいいものはいい(特に近年Facebookで発表されている作品は得意分野を伸ばした素晴らしいものが多い)ですので、しっかりと出来の良しあしを見極めて良い作品を集めていきたいところです。