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2020/02/27 02:27


ジェンナーロ・ガロファロ氏はモダンカメオの先駆けとなった作者の1人で、2020年現在存命中のカメオ作者としては最高に位置するとされる職人です。
アンティークカメオとモダンカメオの違いはなにも時代だけではなく、アンティークはあくまでも彫刻的表現が追求されるのに対してモダンは彫刻と絵画の中間的な表現がなされるところが特徴で、この構図的特徴を人物図で世に示して見せたのがジェンナーロ・ガロファロ氏です。(モダンカメオそのものはジョヴァンニ・ノト氏を端とするが、ノト作の人物図に背景に風景を描いたものは無い)
ガロファロ氏のカメオは人物像の位置が低めにあることが多く、人物を描き空いたところに背景を描くのではなく、最初から人物と背景とが一体になった画面を描く、明らかに絵画的構図の取り方をしているのが他の作者に類を見ない特徴といえ、現在のモダンカメオの源流はジョヴァンニ・ノト氏が作り出したモチーフとジェンナーロ・ガロファロ氏が作り出した構図概念にあると言っていいでしょう。

カメオ作家としての経歴もよく知られ、一般的には14歳(1955年頃)でカメオの道に入りわずか2年後、16歳でカメオのコンクールで受賞、24歳の時には金の彫刻刀の賞を受け、それから2000年にはローマ法王に作品を献上して祝福を受けたとして、ここで日本でも大きく愛好家を獲得したとされています。
作品から読み取れるところでは、もともとは風景物を得意として始まった作家で、一般的に日本で知られる湖を背にしたポートレートは1970年代頃から作り始めて、このタイプの最初期のものも国内でたまに見かけられるものですが、このころはまだまだ粗削りで背景に風景のないものが多く、試行錯誤していたことが伺えますね。
これより前は比較的普通のオールドモダンタイプのカメオを彫っていて、これらは海外市場で稀に見られ、それら複数の作例をみるに70年以前の段階で既に背景は80年代にポートレートの背景に彫るものと変わらないレベルのものが彫れていたことがわかっています。
もとが風景から転向したために当初は人物は苦手であったと見え、ガロファロ氏のカメオは後年になるほど出来が良くなると言われるように、人物の彫りは初期と後期ではまるで出来が異なり、後期のもののほうが圧倒的に出来がいいです。
また、構図面でも進歩がみられ、初期のドレープ状の縁を持ったものは内側の面積が小さくなりすぎてやや窮屈な感じがある(この傾向は50mm×38mmの規格サイズで顕著。55mm×42mm規格になるとひとまず十分な広さと感じる)ところ、後年は縁を廃してより動的な画面を獲得するに至りました。
この後(2000年代以降)背景に風景を入れないカメオが多くなりはじめ、人物の描写も飛躍的にのびていき、詳しい年代は不明ですがG.Garofaloとサインを切るようになってからのガロファロ氏の描く人物は人間・非人間をとわずどこか鬼気迫るような雰囲気さえ持った素晴らしい良作が見られます。
そして2020年7月4日、ジェンナーロ・ガロファロ氏は79歳で亡くなられ、ここにモダンカメオのスタンダードのひとつを築いた巨匠の制作に終止符が打たれることとなりました。

最初に記しましたように国内においては現状最高の評価をなされ、価格もその通りとなっておりますが、私の見解でいえば現在の市場の時価はやや過剰評価気味といったところ、カルロ・パルラーティ作と同様にブランド物扱いが強く、順位をつけては”1番”を異常に持ち上げる傾向に祭り上げられている状態といいましょうか…。
人物物への転換直後を除き確かに出来は素晴らしいものが多いですが、どの作者にも言えるようにすべてがすべて傑作なわけは無く、また商業作の色が濃く同じような作品が大量に存在するということを考えれば、ジェンナーロ・ガロファロという名前だけで専門店でも30万や50万、百貨店や一般的な宝石店では100万や200万という金額がついている現状が妥当かどうかははなはだ疑問が残るところです。※
事実現在の愛好家間の評価も市場時価ほどでないのは明らかで、今日日一般的な作品では、そのルース価格が20万や30万で取引されるということはほとんどありません。
現役作家及び現存数が多く入手が難しくない作家の作品は、時価の5割程を基準に価格を決定している当ギャラリーにおきましても、市場の時価が高すぎると判断しているために、条件的に一般的な作品は市場時価の3割前後となっております。

※敢えて落とす言い方は本意ではないが、一人の過剰評価とその他の作者に対する過小評価は表裏一体となり得る。公正さを欠くように思える現状、納得ができないものは納得ができないと言うほかないことをご理解いただきたい。