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2020/01/23 00:28


フランコ・スカーラ氏は独特の哀愁を持つ作風で有名な作家ですが、そう言われる一方でこれといった”型”が無いという稀有な作家でもあります。
通常カメオの制作は職人に対し、作家ごとの特徴を汲んだ上で需要に沿ったものを作ってもらうという世界であり、名匠・巨匠と呼ばれる作家には大抵なにかしらの代名詞的な優れた具体的な作風があるものですが、スカーラ氏にはそれがありません。
それゆえ若干”わかりにくい作家”であり、また後述の理由※もありあまり一般受けはしない感じがあります。
しかしながら型や需要にすら捕らわれず、自分の作りたいものを作ってそれでも名を挙げるという経歴はまさに芸術家と言うにふさわしく、また同時代の巨匠・名匠と呼ばれる作者に比べると、同氏の影響を受けた後代の作者は類縁者にとどまらず圧倒的に広く多いことからみても、むしろ玄人受けする非常に高い芸術性と表現力を持っていることは明らかです。
購入する側を見ても、カメオをブランド物やただのジュエリーではなく美術品として捉えるコレクターからは、極めて強い支持を集めております。

なお、一般的な作者紹介においてデッサンに熱心に取り組むといった記述がみられるのですが、これを始めたのがおそらくカメオ作品が急に上達し始める90年前後なのかと思います。
古い作品では画面内でアイレベルが一定していないというごく初歩的なパースの狂いが散見され、絵に対して深い理解がある様子が見られず、画面に違和感がある作品が多いです。
いかに彫刻技術が高くとも元になるデザインが悪ければ、精密なだけで美しさのないめちゃくちゃなカメオになってしまいます。
カメオに絵の技量は必要不可欠であり、実際上手なカメオ彫刻師はカメオを見れば絵が上手いことが察せられます。
スカーラ氏のカメオは絵の上達に伴って上達していると思われ、その作品の良し悪しを見極めるにはサインやデザインの流行とは異なる技術的な視点を持つことも重要となってくるのが、また難しくも面白いところ言えるでしょう。

※フランコ・スカーラ氏はいわば大器晩成型の作家であり、風景物は90年代中頃より、人物物がよくなるのはもっと後で2000年頃以降。
古い作品はとても同一人物の作品とは思えないようなものもあり、また大器晩成であるがゆえに出来の良くない作品も相当数存在している。
また、カルロ・パルラーティ氏やジェンナーロ・ガロファロ氏のように若くしての受賞や教皇庁への献上などの話も聞かないこと、さらに代名詞的な作品が無く、見てわかりにくいこともあってブランド力において評価が落ちる結果となっているように思う。
わかりにくいというのは一般受けしないということとほぼ同義であり、そのいかにも前衛美術的な見た目でわかりやすい作品を残したカルロ・パルラーティ氏とは真逆の位置にある作者といっていいであろう。

個人的には21世紀にはいった時点で現役のカメオ作家の中では一押し、現代最高の作者のひとりとされている現状ですらやや過小評価気味であると判断している作家で(絶対的にはよく評価されていると思うが、相対的な話をするとカルロ・パルラーティ氏およびジェンナーロ・ガロファロ氏より落ちると評価されているため、この点で過小評価されているという印象)2000年以降の作品のすばらしさは現代のカメオ作者の作品の中では頭一つ抜けていると思います。
しかしカメオ作者の中には名前だけでその価値を判断してはいけない作者が多数存在するなかで、スカーラ氏はその筆頭ということは常に念頭におかなくてはなりません。
真に完成された作品たちは間違いなく古今最上質の出来であり、19世紀の名匠たちとも中興の祖ジョヴァンニ・ノトとも違う完成形に到達したといってよい名品ですが、氏の作品全体を見れば出来のばらつきが大きいため最も慎重に鑑定すべき作者であると言ってよく、同氏の作品を求めるのであれば良いものだけを取り扱っているお店で買うか、もしくは自身の目をある程度養ってから探すのが無難と思います。