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アンティーク (推定19世紀末) 絵画カメオの祖たる名作『眠る羊飼い』
カメオ縦:約53mm
カメオ横:約40mm
作者:-(アンティーク)
QR:ミュージアムクオリティ+
カナダより到着しました、素晴らしい彫りによるミュージアムクオリティカメオです。
以前大変な反響をいただきました『酒神の巫女』に劣らぬ彫りのカメオで、今回も写真を多くご用意しましたので、カメオの彫りについてはそちらをご覧いただき、文章ではそのほかの説明をさせていただきます。
モチーフはフランソワ・ブーシェの絵画より『眠る羊飼い』。
カメオの状態は極上の完品であり、ヘアライン・欠け・割れ、一切見られません。
フレームにはピン元の部分にやや疲労による割れがありますが、現状使用に問題があるほどではないと思われます。
また、カメオを裏から留める金具の補強のために後年に接着剤を使用した形跡があります。
(接着剤というには透明度が非常に高く気泡も入っておらず質感的にエナメルに近いもので、制作当時カメオを傷めるロウ付けを避けて最初からこの接着法をとっていた可能性あり)
時代の推定ですが、これが非常に難しいところでした。
フレームの造りは刻印のない18ctゴールド製でC型クラスプに長めのピンと19世紀中期以前の様子をしているため、ここだけをみればそのようにみてとれますが、問題はカメオのモチーフがフランソワ・ブーシェの絵画であることでした。
アンティークのカメオにおいて絵画をモチーフとしたものは極めて稀であり、グイド・レーニ作のフレスコ画『アウローラ』をモチーフとしたもの除くとほとんどみることがなく、現代のように絵画のカメオ化が一般的になってくるのは20世紀中頃、ジョヴァンニ・ノト氏による制作を端としております。
また、ブーシェは18世紀に活躍したロココ様式の画家でしたが、その18世紀後半から19世紀後半までの間はロココ様式の人気が低迷していたという点も踏まえますと、フレームから見て取れる19世紀中期以前はそのさなかということになり非常に考えにくくなります。
しかしながら、この彫りが20世紀中盤以降かといえば、それはフレームの様式のみならずカメオの様式としても時代に合わず、また当時これほどの彫りをしうる職人はやはりノト氏を置いて他にないものの、本作の人物の顔つきはノト氏の作風と異なるように見えるため20世紀中頃に本作を作れるだけの職人がいないことになり、妥当な範囲として19世紀末という推定となっております。
19世紀末というと先述の通りそもそも絵画のカメオ化というもの自体が極めて稀であり、くわえてロココは100年の低迷を経てようやく再評価されたばかりというところですので、時代的に極めて珍しい作例といえます。
また、絵画のカメオ化が20世紀中頃にいたるまで一般的とならなかったのは、鮮明な写真が一般化してカメオ職人の工房で容易に絵画の画像を入手することができるようになるのを待たねばならなかったこともあるとみられますが、本作のモデルの絵画は現在ドイツのミュンヘンのレジデンツに所蔵されており、これがどういった経緯で19世紀末のイタリアで作られたのか、アンティークならではの品物の来歴に思いが馳せられます。
カメオ横:約40mm
作者:-(アンティーク)
QR:ミュージアムクオリティ+
カナダより到着しました、素晴らしい彫りによるミュージアムクオリティカメオです。
以前大変な反響をいただきました『酒神の巫女』に劣らぬ彫りのカメオで、今回も写真を多くご用意しましたので、カメオの彫りについてはそちらをご覧いただき、文章ではそのほかの説明をさせていただきます。
モチーフはフランソワ・ブーシェの絵画より『眠る羊飼い』。
カメオの状態は極上の完品であり、ヘアライン・欠け・割れ、一切見られません。
フレームにはピン元の部分にやや疲労による割れがありますが、現状使用に問題があるほどではないと思われます。
また、カメオを裏から留める金具の補強のために後年に接着剤を使用した形跡があります。
(接着剤というには透明度が非常に高く気泡も入っておらず質感的にエナメルに近いもので、制作当時カメオを傷めるロウ付けを避けて最初からこの接着法をとっていた可能性あり)
時代の推定ですが、これが非常に難しいところでした。
フレームの造りは刻印のない18ctゴールド製でC型クラスプに長めのピンと19世紀中期以前の様子をしているため、ここだけをみればそのようにみてとれますが、問題はカメオのモチーフがフランソワ・ブーシェの絵画であることでした。
アンティークのカメオにおいて絵画をモチーフとしたものは極めて稀であり、グイド・レーニ作のフレスコ画『アウローラ』をモチーフとしたもの除くとほとんどみることがなく、現代のように絵画のカメオ化が一般的になってくるのは20世紀中頃、ジョヴァンニ・ノト氏による制作を端としております。
また、ブーシェは18世紀に活躍したロココ様式の画家でしたが、その18世紀後半から19世紀後半までの間はロココ様式の人気が低迷していたという点も踏まえますと、フレームから見て取れる19世紀中期以前はそのさなかということになり非常に考えにくくなります。
しかしながら、この彫りが20世紀中盤以降かといえば、それはフレームの様式のみならずカメオの様式としても時代に合わず、また当時これほどの彫りをしうる職人はやはりノト氏を置いて他にないものの、本作の人物の顔つきはノト氏の作風と異なるように見えるため20世紀中頃に本作を作れるだけの職人がいないことになり、妥当な範囲として19世紀末という推定となっております。
19世紀末というと先述の通りそもそも絵画のカメオ化というもの自体が極めて稀であり、くわえてロココは100年の低迷を経てようやく再評価されたばかりというところですので、時代的に極めて珍しい作例といえます。
また、絵画のカメオ化が20世紀中頃にいたるまで一般的とならなかったのは、鮮明な写真が一般化してカメオ職人の工房で容易に絵画の画像を入手することができるようになるのを待たねばならなかったこともあるとみられますが、本作のモデルの絵画は現在ドイツのミュンヘンのレジデンツに所蔵されており、これがどういった経緯で19世紀末のイタリアで作られたのか、アンティークならではの品物の来歴に思いが馳せられます。